【現在】スタートアップベンチャー勤務時代 (2)

#無職

 さて、公務員浪人時代同様、無職に逆戻りしてしまったわけだが、退職する前に友人(とある繋がりでの後輩にあたる)が社長をやっているスタートアップベンチャーに、働きたいといったら採用してもらえるか聞いてみる(社長に)という形で探りは入れてあって、獲れるということだった。妻は必要とされないような市役所なんて辞めてしまえと、市役所を辞めることには賛同してくれていたが、デイトレーダーになることについては本心では同意していなかったらしい。

 そこで、その会社に社長経由で勤めたい旨を伝え、一回見学しに行って、その流れで採用となった。初出勤はもろもろのタイミングから、退職から2ヵ月後になった。

 無職期間中はおおむね休職期間中と同じような感じで過ごしていた。あとは、オフィスが都内なので、都内某所に引っ越しをした。


#勤務開始

 新しい職場は自分が実質9人目の正社員というまだ小さな会社。スタートアップなので長時間の残業や激務などがあるのではないかと心配であったが、人間関係のストレスも特になく、また納期に追われるような開発内容でもなかったため激務ということもなく、あまりストレスを感じることなく働くことができた。少し変則的な勤務時間であるが残業も基本的には無しで働き続けることができた。

 今までの職場から比べれば天国のように思えた。


#不調の兆候

 3か月ほど働いて、試用期間が終了したころから、ポツポツと休む日が出てくるようになった。朝会社に行く気力が湧かないのだ。そのような時は体調不良で休むか、過敏性大腸の症状がひどいので通勤を回避したいという言い訳をして在宅勤務にしてもらっていた。試用期間で気張っていた状態から少し気が緩んだのかもしれない。怠け心が出てきたのかもしれない。休みや在宅にしてもさほど厳しいことは言われないことにうまみを覚えたのかもしれない。小さなストレスが蓄積したのかもしれない。理由は分からないが、そんな状態が発生しはじめ、年明けぐらいから徐々に悪化していった。

 そして、3月の半ばになって、いよいよこれではまずいということで社長にうつ病であるということを明かして相談をし、週2を在宅にしてもらえれば働き続けられるのでどうにかしてもらえないかという直訴をした。その結果、精神疾患を患っている者の例外規定として週一回出社すれば他の日は在宅で良いという制度を設けてもらうことができた。本当にありがたかった。

 早速、その制度の適応が開始になったのだが、人は低きに流れるとはよくいったもので、週2在宅のつもりが週4在宅という週が2週ほど続いた。思い返すと、今の会社で働き始めた頃から、デスクに座ってはいながらも夕方ぐらいまでなかなかやる気が出ずダラダラしてしまうことがあって、最初からそういう形で現れていたのかもしれないが、日内変動がひどく、夕方まで横になっていて、そこから働き始めてなんとかアウトプットを出すという状態だった。横になっていると、在宅とはいえこんなことをしてていいのか、こんな状態で働き続けることができるのかなどといろいろ考えてしまい精神状態はさらに悪化した。


#自殺未遂

 そして、ある時嫁に仕事やめてデイトレーダーになりたいと冗談半分で言ったところ、それなら離婚だと言われ、他にも愚痴のようなことを畳みかけられた。これを受けて「もうどうでもいいや」という気分になった私は、深夜、嫁が寝ているところをそっと出ていき、車でドンキホーテに行きヘリウムガスを買って、近くの住宅地でヘリウムガス自殺を図った。しかし、失敗に終わった。本来うまくいっていればヘリウムガスを充てんした袋を被っても苦しくないはずなのだが、二呼吸ほどしたところ苦しくて外してしまった。自殺は失敗した。本来800Lは必要なところで、20Lほどしか用意してなかったので、それが原因だったのかもしれない。しかし、一方で濃度が高ければ一呼吸であの世行きという話もあったので、うまくいくと思っていたのだが目論見が外れた。

 失敗した後は、購入した物をコンビニのゴミ箱に捨てて、帰宅して、嫁に起こした出来事を話した。心配されるかと思ったが、反応は怒りであった。そして、次の日はこんなことのあった日であるから休もうと思っていたが、車に乗せられて無理やりに会社に行かされた(いつもは電車通勤)。

 これまで死にたいと思ったことは数えきれないほどあったが、いつもブレーキがかかって実行には移らなかった。何故この時ブレーキがかからなかったのかは今となってもよくわからない。まあ、感情的になっていたのかもしれない。


#休職

 その後は在宅で勤務はしたが、出勤しようと思っていた日が体調不良での休みになって、二週間ほどオフィスに顔を出さないというような状態になった。そして、4月の半ばになって、自分がまた自殺未遂を起こすのではないかという思いから措置入院(自分や他社に危害を加える可能性のある精神障害者を強制的に入院させる制度)をした方が良いのではないかと、嫁と兄に提案した。これで仕事を辞めてデイトレーダーになるなり、異なる勤務形態(アルバイトとか)でリモートワークするといった形の勤務形態を妻をはじめとした周りの人々に認めてほしい、という打算もあったかもしれない。結果、兄の提案でとりあえず医師に判断を仰げということになった。しかし、措置入院というのは自殺を図ったその場に警察が介入した場合などに使われる制度で、本人や縁者が後日頼んだからといって保護してもらえる制度ではないことを告げられた。自身ないし縁者の医師で入院する任意入院だと月に10万円程度はかかるということで、入院はあきらめた。代わりに、休職の診断書を書いてもらい会社に休職を申し出た。

 上司は在宅制度を設けるとなった時から、休職という形でしっかり休んだ方が良いのではないかということを言ってくれていたため、心配はしていなかったが、特に会社との摩擦もなく、休職は受け入れられた。

 そして4月末から休職が開始となり、5月末に至る。


#カウンセリング

 市役所での休職時にお世話になっていたカウンセラの先生に再度かかった。そこで言われたことは、うつ病の期間全体を振り返った上で以下の通りであった。

 ・いきなり選択が難しい選択肢について悩んでため込んで、結局いきなり決断する傾向にあるのではないか(市役所の退職、自殺未遂、今回の休職)

 ・人に怒りや決断をうまく伝えられないがために、それを伝えるために鬱病になっているとは考えられないだろうか(今回で言えばデイトレーダーになりたいという思い)。自殺未遂についてもそう。

 ・復職や生へのモチベーションを取り戻すという方針とデイトレーダーになりたいという方針は相容れないところがありカウンセリングしにくい

 ・前回はデイトレーダーになりたいという隠れたベクトルの思いについてケアできなかったから、認知行動療法による市役所への復職もうまくいかなかったと考えられる

 ・次回で方針を決めたいので、どちらに向かうのか決めてきてほしい

 自分の返答は以下。

 ・正直を言えばデイトレーダーになりたいという思いを潜在的に持っているが、今の会社には恩義もあるし、とりあえずは復職したいと思っている

 ・親族とも相談して決めてくる

 このカウンセラの話を聞いて、確かにこれまでに鬱になった時は指摘されたパターンに当てはまっていると思った。

 この内容を兄と妻に伝えたところ、兄は返答通りで良いのではないかという。妻にはデイトレーダーになることが根本的な解決になるので、どうにか認めてもらえないかと話をしてみたが、やはり離婚だという。というわけで、復職に向けてカウンセリングを受けていくことになりそうである。


#うつ病を患っての心的変化

 学生時代は、すごい技術やソフトウェアを開発することが夢で、同時並行して普通の家庭を築くというのが人生の展望であったが、今は兄や母、妻などを悲しませないために仕方なく生きてるというのが自分のメンタリティである。子供も欲しいと思っていたが、今の自分の生活力(お金を稼ぐ力の安定度など)を考えると、持たない方が良いのかなとも思う。障害者保険でももらいながら暮らしていけるならそれでも良いし、アルバイトでやっていけるならそれでも良い。立派な、もしくは普通の人生でなくても良いので、とにかく生きていければそれで良いというような考え方に変わってきている。


#休職継続中

 現在(8月初め)まで、あいかわらず会社は休ませてもらっている。日内変動などはよくなってきた感じはあるし、もう9月までは現状、休職継続の予定だが、10月からは復職できるかな、しようかなと思いつつある。

 日々の生活は食っては寝の繰り返しである。で昼間は寝ているので、夜中に大体4時間ほど何かしら活動をするという生活パターンになっている。なにか、やる気のわくことがあれば良いのだが、読書も、アニメ視聴もどうもやる気にはならない。これがうつ病のせいだとすれば、やはりまだよくなっていないということになるのだろうか。とにかく、いわゆるニートよりもろくでもない生活をしている感じだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ある男のうつ病転落人生 @toraboruta

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ