『花束を貴女に』~母の日記念小説~

萱草真詩雫

娘から母へ


今日 5月14日(日)。


俺は花屋に向かった。


足取りは軽く、鼻歌を唄いながら


小さなお店の中へと入る。



可愛らしい花、


鮮やかな花、


綺麗な花。



種類は様々、だけど俺は迷わない。



ーよし。


先ずは目に飛び込んだ、


白くて小さい花弁が連なる


シロツメグサを手に取る。



次に、母が大好きなビオラ…


パンジーよりの小柄な、


黄色や紫などの犬の模様に似た愛らしい花を何種類か。



そして、この日に欠かせない。



カーネーションを5本。



お店のお兄さんに選んだ花を渡す。


お兄さんは


『今日は特別な日なので綺麗にラッピングしますね?』


とニコッと笑って言ってくれたから。


俺も、


「はい、大好きな人の感謝の日なので!」


と微笑んで答える。


お兄さんが手際よく、花の種類や色味を考えて丁寧に包んでくれた。



そのあと俺はお兄さんに頼んでメッセージカードを貰い、


小さい字が見にくいあの人の為に、


大きめな字で一言書いて店を後にした。



花束を大事そうに抱え、


電車とバスを使って隣の県に住む実家へ。



勿論連絡は入れてない。



実家のマンションに着き、


玄関の前で立ち止まると


ゆっくり深呼吸。


そして持っていた実家の合鍵を使い扉を開け、


中に入って目標人物のいる部屋の引き戸を開き、



「おかあさんただ今!!」


と言うと、


凄く驚いた表情をして俺を見つめる母に、


ずいっ、と花束を差し出した。


「母の日おめでとう!」


まだ戸惑ってる母に俺は気にせずじゃあ、と


手を振って満足げに実家を後にした。



……添えられてたメッセージガードには。



  ー俺を産んでくれてありがとう



   貴女に愛されて幸せですー




   と、書かれてあった事を


     知っているのは


      母と娘だけ。




      ー…END…ー



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『花束を貴女に』~母の日記念小説~ 萱草真詩雫 @soya

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