ネクロマンサーのいる小学校

ちびまるフォイ

この学校は子供のためすぎる学校

子供のために、子供を対象とした、子供のための学校。

その校長は児童の登下校に頭を悩ませていた。


「うーーん。最近、子供が巻き込まれる事件が多い。

 これでは安心して登下校できないぞ」


校長は死体蘇生術(ネクロマンス)をすることに。


「できた! これなら集団で登下校できるから安心だ!」


校長は子供の死体をよみがえらせて、

生きている児童と一緒に登下校させるようにした。


死体も自分がまさか死んでいるとは思わないので、

ごく普通に登下校するので区別もつかない。


「我が校は、子供第一の学校。

 子供が危ない目に合うようなことはもちろん、

 子供が嫌がるような勉強も全部ナシだ」


校長はある日から一貫して子供至上主義な教育方針になった。

子供からは絶大な支持を集めている。


死体と登下校するようになって校長も安心していたが、

1件の電話がかかってくると、ただでさえ死体のような校長の顔色が悪くなった。


『くくく、お前ンとこのガキは預かったぜ。

 返してほしければ学校の運営費すべてよこしやがれ』


「そんな!!」


集団の登下校していても関係なかった。

誘拐犯は巧みな話術で子供をたらしこんで連れ去ってしまった。


「先生方、いますぐ児童の点呼をとってください!」


各担任の先生は急いで生徒の出席を確認していく。

いったい誰が誘拐されたのか……。


「校長先生、すべての児童がそろっています」


「ええ!? それじゃあ誘拐されたのって……」


死体だった。

ネクロマンスした死体が誘拐されていた。


先生方はほっと胸をなでおろした。


「ああ、よかった。すでに死んでる子なら大丈夫ですね」


「先生方、なにを言っているんですか!

 生きていようと死んでいようと子供を救うのが大人です!」


「校長! それじゃ死体のためにお金を渡すんですか!?」


校長は犯人との取引に応じて現場に向かった。



「よーし、金は持ってきたみたいだな。中に入れ」


犯人は銃をかまえながら校長を立てこもっている家に入れる。


「金をこっちへ渡せ」


「……ああ、わかっ……た!!」


校長は金を渡すふりをして誘拐犯へタックル。

不意打ちに犯人はあっという間に取り押さえられた。


「犯人を捕まえました!!」


校長は集まっているマスコミに高らかな勝利宣言をした。

警察も安心して立てこもっている家に入っていく。


「くそ……ただで捕まって……たまるか……!」


犯人は最後の力を振り絞って、銃を校長に向けて撃った。

弾丸は校長の眉間を貫いた。

完全な即死コース。


「犯人確保ぉーーー!!」


そこでやっと警察が犯人を取り押さえた。

部屋には頭に風穴があいた校長が倒れていた。



※ ※ ※



事件後、警察署では対応に追われていた。


「前の誘拐事件の犯人の書類どうなってる?」


「作成中です。誘拐なんて厄介な事件を持ち込まれて

 こっちは休日返上ですよ。まったく……」


「誘拐の処理なんて可愛いもんさ。もう一つの事件に比べればな」


「もう一つ? 誘拐以外に事件なんてありました?」


「あの校長がネクロマンスされていた死体だったことだよ」


誘拐犯に撃たれた校長だったが、すぐによみがえった。


「あの、なにが問題なんです?

 死体の処理もしなくて済むし、事件性もないじゃないですか」


「はぁ……お前な……」


上司は察しの悪い部下に頭を悩ませた。




「あの校長を殺してネクロマンスしたのが、

 小学校の生徒の誰かなんだよ。これから探さないと……」


捜査しにくすぎる容疑者に警察は長い溜息をついた。

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