5錠
あれから、ドキドキが止まらない私は、案の定翌日寝坊をしてしまった。
よく分からない感情に少しイラつきながら、通学路を走った。
遅刻ギリギリで学校に着いた私が、人の少なくなった昇降口で上靴に履き替えてる時だった。後ろから声をかけられた。
「…はよ」
私は誰だろうと思いながら、後ろを振り向くと、あの男子生徒がいた。
「お、おはよ…」
びっくりしてしまい、挨拶がどもってしまった。
「もう、頭平気か?」
「あ、うん」
「…そ」
それだけ言うと、彼は教室へと歩き始めた。
私は、ぼんやりとその後姿を見ていたのだった。
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あれからチャイムの音で、ハッとなった私は再び教室まで走ることとなった。
授業中も彼のことが頭から離れないでいた。
だけど、ふと思った。
(そう言えば彼の名前ってなんだろ?)
男子に興味無かった私は、隣のクラスという事以外、彼の事を何も知らなかった。
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昼休みになり、友達と中庭のベンチに座りご飯を食べようとしていた。だけど、私は飲み物が無いことに気づき、1人で自販機まで買いに行った。
自販機で何飲もうかと悩んでいると、また後ろから声をかけられた。
「よう」
もう声だけで気づいた私は、少しドキドキしながら振り向いた。
「こ、こんにちは…」
私のよく分からない挨拶に、彼は少し笑いながら返事をしてくれた。
「おう」
でも人見知りかつ苦手で、あまり男子と話した事のない私は口を閉じてしまった。
彼も自分から話すタイプではないのか、お互いに黙り込み、沈黙が続いた。
昼休みで人の声がどこかからか流れてくる。
外に面してる自販機なので、風が二人の間を通り抜けた。
そんなに時間が経ってないにも関わらず、私にはその時がすごく長く感じた。だが、その沈黙が苦痛では無かった。
不思議な空気が2人を包み込んだ。
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人見知りな私は、目線を合わせられず下の方ばかり見ていた。
だが、ふと上から視線を感じ、下を向いていた顔を上げた。
彼はじっと私を見ていた。
そんな私はというと、、、
(うわぁ、凄く背が高いな~。首疲れちゃいそう)
なんてとんちんかんな事を考えていた。
気づくと、お互い無言で見つめ合っていた。
彼の鋭い視線に、ドクンと心臓が跳ね上がる。
(まただ…また胸が痛い…)
私はまた、今までに感じたことのない胸の痛みに困惑した。
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頭ん中でプチパニックを起こしている私に彼が話しかけてきた。
「…なんか俺の顔についてんの?」
「…へ?」
急に話しかけられた私は、少しマヌケな声が出た。
「…いや、なんかすごい見てくるから」
(イヤイヤあなたが見てたんでしょうが!)
と心の中でツッコミを入れるが、実際には、、、
「…あ、ごめんなさい…」
と何故か謝り、視線をまた下に向けた。
「…あ、あの。そう言えば何か用ですか?」
この空間に少し耐えられなくなった私は、彼の目的を聞いた。
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すると、彼は黙り込んだまま、何故か顔を赤くして、頭をガシガシと掻いた。
(な、なんだろ?この反応…。私変な事聞いたかな…)
彼の反応に訳が分からず、戸惑ってしまった。
その時、、、キーンコーンカーンコーン、
と昼休み終了のベルが鳴った。
「あ…あの、じゃあ私はこれで…」
授業の準備もあるから、私は立ち去ろうとした。
すると、ガシッとまた腕を掴まれた。
「今日、一緒に帰らないか?」
「…え?」
「授業終わったら、昇降口で待ってて。じゃまたあとで」
と言うだけ言って、彼は立ち去った。
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