3錠

閉じていた目をゆっくりと開けると、白い天井が目に入った。

消毒液の匂いが鼻をかすめ、気づけば保健室にいるようだった。


なんだか顔と頭が異常に痛い。


自分が何故ここにいるのかと、少し混乱した。



すると、、、


「…おい、大丈夫か?」


と、横から男の低い声がした。


私は、低いけど落ち着いた声に、耳を奪われていた。


____________________


そんな私にもう1度、さっきより少し強めに声がかかる。


「おい。大丈夫かよ?」


私はハッとして、意識が段々とハッキリしてきた。


「え?」


「はぁ…大丈夫か?」


横に視線を向けると、さっき体育館で見た、背の高い男子生徒が椅子に座って私を見ていた。


「…え、どうして…?」


彼は安堵のため息なのか、それとも呆れたのか、一息つくと私に説明してくれた。


「体育ん時に、俺がアンタにボールをぶつけて、倒れたんだよ。…覚えてないのか?」


そう言えば、目覚める前に顔に強い衝撃が走ったのを思い出した。


「あ…そう言えば顔と頭が痛い…」


「頭は倒れた時にぶつけたみたいだ。悪かったな」


表情にはあまり出ていないが、私を心配している声で謝られた。


____________________


「えっと…大丈夫。少しズキズキするけど何ともないから」


私は彼を安心させるためそう言った。


それを聞いた彼は少しだけ安堵の表情をした。


「はぁ…なら良い」


それからしばらく、お互い話すこともなく、保健室が静まり返った。


(ど、どうしよう。何か話さなきゃ)


私は沈黙に耐えきれず、少し焦った。



すると、ガラッと扉の開く音がした。


____________________


ベッド周りはカーテンが引かれてるせいか、誰が入ってきたのかは分からないが、コツコツと足音がこちらへ向かってきた。


シャッとカーテンが開かれた。


「あら、目が覚めたのね」


柔らかな優しい声で話しかけてきたのは、保健室の養護教諭の女性だった。


「気分はどう?」


「あ、えと、大丈夫です…」


「軽い脳震盪起こしてたから、もう少し横になってなさい。あと君はもう、教室に戻りなさい」


先生は視線を私から彼へと映した。


「…じゃあ、悪かったな」

少し素っ気ない声で言いながら、彼は椅子から立ち上がると、保健室から出て行った。

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