6錠
あまりの唐突なことに、私の頭はついていけてなかった。何を言われたのか良く分からないまま、午後の授業を受け、気づけばホームルームが終わっていた。
(…あれ?もう放課後?! え、てか一緒に帰るの?)
ようやく理解した頭の中では、プチパニックが起きていた。
(いやいやそんな訳ないよね?てか無理だし!)
彼と一緒に帰るなんて事が、他の子達にバレたら、私の平和な高校生活が崩れるのが目に見えた。
なので、私は、、、スルーする事にした。
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とりあえず私は、皆が帰るのを待ってから、帰宅することにした。
放課後の教室に私一人だけになり、窓から西日が入り、全てが真っ赤に染められていた。
校庭からは、部活動の声が聞こえ、自分だけ違う世界にいるような気がして、綺麗な夕日に見とれていた。
どのくらいの時間が経ったのか、いきなり教室の扉が開いた。
私はその音で我に返り、扉の方に視線を向けた。
すると、そこには、、、彼がいた。
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「…やっぱりいた」
息を切らしている彼は、少しだけ苛立っているような気がした。
私は驚きのあまり、言葉が出てこなかった。
そんな私をよそ目に、彼は教室の中へと入り、私の元まで歩いてきた。
「あのさ、一緒に帰ろうって言ったよね?」
(なんで彼がここに…?)
この状況に、私は理解出来ずにいた。
「てか、聞いてる?」
彼が更に苛立ちながら聞いてきた。
「…え、あ。ご、ごめんなさい…」
私は少し泣きそうになりながら、謝罪した。
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そんな私に彼は、一つため息をつくと、私に近づいてきた。
私はビクッと肩を揺らし、一歩後ずさりした。
それでもどんどん彼は近づき、ついに私の目の前まできてしまった。
驚きのあまり、目線を逸らせずにいた私と彼は、再び見つめ合っていた。
そんな二人を、真っ赤な夕陽が包み込んでいた。
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気づいた時には抱きしめられていた。
私は何が起きたのか分からないまま、彼の鼓動を聞いていた。
彼の心臓は、まるで飛び出しそうにドクンドクンと音を鳴らしていて、私の身体にまで響いてきた。
すると、彼につられたかのように、自分の心臓もドクンドクンと鳴り始めた。
二人の鼓動が重なり合っていた。
まるで、彼の感情が、、、感染したかのように。
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