ドワーフとエルフの漫才

一二三四五六

とある酒場で

「どうもドワーフじゃ!」

「どうもエルフでーす!」


「いつもは、ワシたち魔王を倒そうと冒険をしている身なのじゃが、少しばかり金欠でしての、こうして吟遊詩人みたいな事をしているわけじゃが」

「はいはい!」


「ワシが戦士ウォーリアで相方が僧侶プリースト、あと勇者と魔法使いウィザード、四人のパーティーで冒険してるんじゃよ」

「はいはい! 回復はバッチリですよ!」


「エルフとドワーフって仲が悪いなんての、世間じゃ言われてるかもしれんが、ワシたちのパーティは仲良くやらせてもらっとる、幸運な事じゃよ」

「はいはい! 冒険には信頼関係が大切ですからね!」


「今、目を閉じても思い出すのお、あの冒険の数々」

「はいはい! そんなことよりドワーフさん」


「そんなことじゃと!?」

「冒険話は本職の吟遊詩人に任せればいいのです」


「むぅ、確かにそういわれればそうじゃが、なにかの?」

「面白い話がありまして私、昔に犬を飼ってまして」


「ほう、大丈夫かの、そんなにハードル上げて」

「大丈夫ですって! それで飼っていた犬がとても可愛いくて、骨が大好物なんですけど、そしたらどうなったと思います?」


「むぅ、スケルトンに嚙みついたとかか?」

「そんなわけあるわけないじゃないですかー、実は……ある朝起きて見たら……自分が骨になってたんですよ(笑)」


「スケルトンになっとるじゃないか!」

「ははは! もうおかしくておかしくて!」


「いや待て待て、それ骨しか食事与えてなかったから、未練でスケルトンになっとるんじゃよ。(笑)で語るタイプの話じゃないぞ!」

「えー、あー、でもそのあとも元気ですよ、骨は食べなくなりましたけど」


「そのまま飼っとるんかい! 悪い事は言わん、浄化してしてあげなさい、その町の教会は何も言わないのか」

「む、師匠の悪口はやめてください、私がこうやってパーティで活躍できるのも師匠がいたからなんですよ」


「おお、それはすまなかったの、どんな師匠だったのじゃ」

「えーと、無口で魔力の量がすごくて、あとお金持ちでしたね」


「ん、貴族なのかの?」

「いえいえ、私も詳しくは知りませんけど、よくリッチ、リッチって呼ばれましたから、その割には骨が好きでしたけど(笑)」


「それリッチじゃー!」

「ああやっぱみんなリッチだと思うんですねー」


「違う違う! 死霊モンスターのリッチじゃ! え、リッチが師匠なの? どうりで回復魔法が少しひんやりしてると思ったのじゃ!」

「えーと、あれ実は魔法じゃなくてバレないようにポーション振りかけてました」


「魔法ですらないじゃと! そりゃひんやりするのじゃ! 魔法は!? 僧侶プリーストじゃろ!」

「えーと、今まで黙っていましたが、私、回復魔法が使えないんですよ」


「え、なぜその事、今まで黙ってたのじゃ!」

「回復できない僧侶プリーストなんていらないとパーティから追い出されるのではないかと思ったら言い出せなくて、ただでさえ女性は私一人ですし、足手まといにならないよう必死で……」


「なんじゃそんな事か、そんな事で追い出すようなメンバーではないのじゃよ」

「でも大丈夫ですよ! ポーション一杯買いましたから!」


「それでか! こんな事してまでお金を稼ぐようになった理由は!」

「ふぇぇ! そんな怒鳴らないでくださいぃ、他に理由があるんですよぉ」


「なに!? まだ何かあるのか!」

「いえ私、僧侶プリーストですから、蘇生魔法は得意中の得意なんですが」


「そうじゃの、僧侶プリーストの専売特許じゃからのう」

「でも私まだ半人前で、蘇生がうまくいかないんですよ」


「ふむ、しかし熟練の僧侶プリーストでも確率で失敗すると聞くからのう、そこはしょうがないんじゃないのかのう」

「いえ、蘇生が成功しても、すぐに喋らなかったり」


「蘇生後は酔いに近い状態と聞くからのう、それで喋れないんじゃろう」

「あと、急に暴れたり、襲い掛かったり」


「混乱してたのじゃろう」

「あと心臓も動いてないですし、目の焦点もあいません」


「ん?」

「あーでも私の言う事はなんだか聞いてくれて、教会に連れて行くと元どおりになるんですけど……」


「おーーーーーーーーーーーーーーーい!

お前さん死霊使いネクロマンサーかーーーーーーーーーーーーーーい!」

「えぇ!?」


「えぇ!? じゃないのじゃわい! リッチが師匠だったり、回復魔法が使えなかったり納得じゃよ! だから勇者殿の様子がおかしかったのか! そりゃ教会へのお金稼ぐしかないのう! よくもまぁ序盤で信頼関係が大切と言えたのう!」

「ひいぃ、ごめんなさいぃ」


「いろいろ言いたい事はあるが、もう、隠し事ないんじゃろうな」

「えっと実は……」


「あるんかい! あとでメンバーになんて言ったら!」

「えーと実は私、エルフじゃなくてダークエルフなんです!」


「それは見たときから分かっとる! そんな褐色で角の付いたエルフがいてたまるか、ワシと仲良くできるのもそこが大きいぞ!」

「え!? あ、あと実は私、魔王の娘なんです!」


「それも見た時から分かっとる! 胸元にある紋章、魔王の親族にしか出ないモノと聞くのじゃ、そして魔王の娘の逃亡事件、バレてないと思うたか!」

「え、知ってて私をパーティに入れてたのですか?」


「あたりまえじゃ」

「それなのに私に優しくしてくれて……」


「まぁ、唯一の女の子じゃからのう」

「ぐすっ、私、失敗も一杯してきたのに……」


「失敗なんて誰にでもある事じゃよ」

「うぅ、ぐすっ、それに私僧侶プリーストじゃなくて……」


僧侶プリーストでなくとも死霊使いネクロマンサーなら他にもできる事が沢山あるじゃろう」

「でも、ふぇ、私のせいで勇者様と魔法使いウィザードさんが……」


「教会で治せば済む事じゃ、この事を話すためにも早くお金を稼がないとならんのう、同じ仲間じゃしのう」

「ふぇぇぇぇぇぇん! こんなぁわたじをぉ、ながまとよんでぐれてぇ……ぼんどうにいいんでずがぁ……」


「なにを泣いとるのじゃ、もちろんじゃよ、お前さんは立派なワシ達の仲間じゃよ」

「ドワーフざぁん……」


「だっての、ワシら全員」







「大きいおっぱいが大好きなのじゃよ」

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ドワーフとエルフの漫才 一二三四五六 @daisukidice

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