第4話 花散る。

 本日の客は少ない。これは、人間ひとの世界で言うヘイジツというものらしい。どうやら、シゴトというものをしていて、私を見る時間などないというのだ。まあ、それでもよい。本日の客は、布を頭に巻きつけもしていないし、おかしな舞もしていない。食物に心を憑りつかれもせず、静かに私を見上げている。

 なんと素敵なショーなのだろう。これほどまでに真剣に見つめてくれるとは、頭が下がる。おまけに、

「あら、きれいねー。」

と褒めてくれるし、微笑んでくれる。そう、これが本来の私のあるべき姿。静かに佇み、それだけで人間ひとを微笑ませる。私には、それができる。ここにいるだけで、人間ひとを笑顔にできるんだ。私の存在こそが、スターなのだ。


 今、私はかがやいている。


 美しいものを美しいと心から愛してくれる人間ひと。それが美しい人間ひとだと私は思う。私は、その美しい人間ひとたちにプレゼントを贈った。そよ風に乗せて、きれいな花びらを。


 そして、この子たちは役目を終えた。静かに降壇し、頭を下げた。


 美しい人間ひとよ。ありがとう。

 

 感謝の気持ちを込め、花散るあとに葉桜をお見せしよう。

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今、私がかがやくとき。 柚月伶菜 @rena7

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