第3話 花舞う。

 そのとき、怒りを吹き消せというように風がやってきた。そよ風は、私の身体中を駆け巡り、花びらを散らした。

 その花びらは、ある小さな女の子のもとに落ちた。その子は花びらを拾い、母親に言った。

「ママ、桜の花びら。ほら、あの桜、きれいだよ。」

またひとり、私のファンができた。


 しかし、それだけでは満足いかない。私に見向きもしないで舞っている奴らがいる。ステージに立つと、必ずアホな客はいるものだが、こういうアホな客を虜にしてこそ真のスターなのだ。さあ、そこの頭に布を巻いているアホよ。


 私の舞を見よ!!!


 私は風と協力し、それはそれは見事な舞を披露した。下で舞っているアホどもも、やっと私の存在に気づき、驚嘆の声をあげた。

 

 どうだ。これが桜だ!


 拍手が鳴りやまない。これほどの群衆から賞賛の声を聴けるとは、きっと子どもたちも喜んでいるはずだ。この子たちにとっては、今このときこそが、命かがやく瞬間なのだから。

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