第2話 花ひらく。

 遠くから美しい歌声が聴こえる。喜びと悲しみが入り混じる道中で、ある親子が抱きしめあう。私はこの親子を知っている。今はもう大きな背中をしている子どもだが、数年前までは、私に寄りかかり泣いていた。暗くなるまでいるものだから、親が探しにきて、手をつないで帰っていった。いつもひとりぼっちで歩いているなと思っていると、いつの間にか誰と歩いていたり、その誰かと離れて歩いたり、またひとりで歩いたり。人間ひとというものは、おもしろい生き物である。そのうち、こんなに大きく成長した。


 私の子どもたちも、そろそろ大人になるころだ。太陽からの知らせを待ち、第一子がゆっくりと手を伸ばした。


 太陽からの後押しもあり、子どもたちが次々と大人になっていく。しだいに私の裸は美しい姿に囲まれ、ひとつの大きな桜となった。


 さあ、人間よ。私をご覧なさい。この美しい姿を、子どもたちの成長を。

 

 私の声が人間ひとたちに届くと、おかしな飾りをつけたり、食物を交換し合ったりと、騒がしくなる。中には私を見つめるファンもいるが、多くの人間ひとのお目当ては食物らしい。これほど近くに美しい姿があるというのに、食物に喰いついてばかりの連中には腹が立つ。あちこちに頬紅をつけて舞っているアホが出てくると、これはもう堪忍袋の緒が切れる。


 このステージに立っているのは私だ!

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