最弱魔王は運命を変えたい   ~デス・ストーリーは突然に~

@daigoro-daigoro

第1話 プロローグ

「え、俺死ぬの?」

 太陽は沈み、暗くなった城で他にすることもないので、本を読んでいた俺はいきなり死亡予告を受けた。

「よく聞いてください。占い師のおばあ様が、今から12日後に魔王さまが死んでしまう未来を視たそうです」

 そう言ったのは、俺に唯一いる部下で側近のミーア。何日か出かけてようやく帰ってきたと思ったらふざけた事を言ってくれる。

「ごめん、もう一回言ってもらっていい?急にそんなこと言われてもよく分からないんだけど……」

「ちゃんと聞いてください!!魔王さま、凄く大切な話なんですよ‼」

 今までにないくらい声を荒げていらっしゃる。こんな鬼気迫る感じで話すという事は冗談ではないのかもしれん。

「ちゃんと聞いたよ、けどそんな慌てる必要はないんじゃないの?だって占いだろ、しかも12日後なら死なないように回避することなんて、いくらでも出来るだろ?今死ぬわけではないんだし」

 俺は持っていた本を再び読みなおそうとした。

「それが…、それがですね、魔王さま。実は12日後の魔王様の死はこの世界で絶対に起ってしまう確定された未来なのです」

 虚を突かれるとは、正にこのことだろう。すぐに言葉が出てこなかった。それどころか、持っていた本すら落としてしまう。

「えっ、……いやいや待ってくれ、そんなことあり得るのか、確定された未来なんていうのは聞いたことないぞ」

 俺は何度も占いのおかげで助かってきた。あらゆる問題や苦難の解決法を占いによって見つけてきた。その結果、魔界の中で辺境の地ではあるが、この国の長として魔王になれた。占いについては人一倍お世話になっている。しかし、これまでに占いによる予知で確定された未来なんていうのは出てきたことはなかったはずだ。

「その通りです。ですが、今回は特殊な事みたいで、魔王さまが今後、この世界でどのように行動しても魔王さまが12日後に死ぬという未来は決して変わらないそうです」

「俺が魔界で最強って言われているウロボロスを倒せるようになっても?」

「魔王さまは死にます」

「俺が魔界を統一したとしても?」

「魔王さまは必ず死にます」

「不死の薬とか賢者の石が見つかったとしても?」

「たぶん見つかっても魔王さまは手に入れられないんだと思います」

 結構ハッキリ言うんだな。こんなことがあるなんて思ってもいなかった。悪い未来を変えるための占いだったはずだが、占いばかりに頼りすぎたツケがまわってきたのかもしれない。

「うーん、こいつはやばいな。まさかこんなに早く死ぬことになるとは思わなかった。色々とやりたいことあったんだけどな」

 今の地位に就いて数年、ようやく国が安定してきたと思っていたのに。

「魔王さまには心残りがあるのですね、まだまだやりたいことがあると……」

 そんなことを言う側近は少し目を輝かせているみたいだ。

「そりゃあ、そうだろ」

「それでですね、魔王さま。実はすごーくいい提案があります!」

 さっきまでとは何か雰囲気が違う。何か企んでいたのか。

「実は一つだけ、魔王さまが助かる方法があります!」

「さっき必ず死ぬって言っていたよね?」

 相変わらず言うことは無茶苦茶だ。

「魔王さまが必ず死ぬのは、この世界でのお話です」

 どういうことだ?

「つまり、今のこの世界が大きく変化すれば、魔王さまの運命も変わるはずなのです」

 ミーアは笑顔を俺に向けながら言葉を続ける。


「魔王さま、死ぬまでに世界を変えてみませんか?」


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