気配。

紀之介

キョロキョロと…

「…何か、気配がします」


 いきなり会話を中断して、立ち上がる葉月さん。


 部屋の様子を、キョロキョロ伺いだします。


 芽生子さんは、突然の出来事に あ然となりました。


 暫くして葉月さんは、ある場所を凝視します。


「あれですね。」


「ちょっと葉月? 人のバッグを勝手に…」


 開けて 中から紙袋を取り出した葉月さんは、芽生子さんの目の前に突き出しました。


「これ、クッキーですよね!?」


「─ そうだけど」


「私の大好物、なんです!」


「だから…何??」


「どうして、こんな意地悪 するんですか?」


「…は?!」


「今私、クッキー断ちをしてるんです! 願掛けで!!」


 不条理な怒りをぶつけられ、芽生子さんは むっとします。


「そのクッキー、別に あなたに食べさせるために、持って来たワケじゃないって 知ってた?」


「あ。」


「人のバッグを勝手にあさって、文句言う人って どう思う?」


「よ…良くないと……思います………」


 自分のしでかした事を自覚した葉月さんは、シュンとなって俯きました。


「─ 申し訳ありません」


「何をするも葉月の勝手だけど…周りに迷惑かけない様に やってくれると、嬉しいかな。」


「は…い……」


「いくら願掛けでも、クッキーを匂いじゃなくて、気配で探す様になる程 自分を追い込むのは、止めた方が良いと思うぞ?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

気配。 紀之介 @otnknsk

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ