エンバーミングカットアウト

作者 ポンチャックマスター後藤

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20人が評価しました

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★★★ Excellent!!!

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女優志望の25歳・友里恵が殺害されたことをきっかけに、自称ライターの藤田が、関係者に聞き込みをしていく様子を描いた作品。

荒削りだが独特の緊張感を持った心理小説で、芥川龍之介の「藪の中」を彷彿とさせる。
が、この作品では犯人や動機はもはや重要ではない。

ここで表題を想起すると、つまり死者の情報を集めることで死者のイメージを再構築する作業がまさに「エンバーミング」「カットアウト」ということになるのだが、いわば本作はその時間的進行の中で人々が振り回され、発狂や忘却という形で変容していく様が、テープ起こしや手紙といったメディアの意匠を駆使することで描かれる。

ミステリであれば、謎という中心へ物語が収斂する様子が描かれるだろうが、この作品ではむしろ発散していくところが興味深い。

登場人物はそれぞれ好き勝手なことを言い、犯人である峠の述懐すらもはや友里恵そのものとかけ離れた、独自のイメージを語ることになる。
そんなところへ連れて行かれる読書体験が奇妙に心地よい。

(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=村上裕一)

★★★ Excellent!!!

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登場する人物はシンプル且つ立ち位置も明確。そして描かれるのも両者の会話のみという異色のサスペンス小説。
人々の口から出てくるのは正気の沙汰とは思えない自分勝手とも呼べる狂気やばかり。ですが、気付けば自分も彼等の話を聞く内に妙な引っ掛かりを覚えてしまい目が離せなくなる。
そして衝撃のラストを見た瞬間、何を思うのか……。因みに私は人間の底知れぬ闇を感じさせられました。

★★★ Excellent!!!

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よく事件の被害者が「誰かに恨まれるような人じゃなかった」と言われているのを見る。他人事のように「怖いですねえ」とコメントしてる人も見る。
ただ、この世に罪を犯していない人間はいないし、恨まれていない人間は皆無だと思っている。あなたが満員電車でゲームに夢中になり、肘で誰かにぶつかってそれが殺人を犯す人の最後の導火線だったら? あなたの買った最後のチケットが、狂信的なそのアイドルファンの目の前だったら? 

人はそんなことで恨みを買ったり、知らないうちに罪に手を貸しているケースだってあるのだ。ここに出てくる人は皆、もちろん歪んで狂っている。
それは単にルートが違う、選択肢が違っただけのあなたでもあり、私でもあると思う。

きれいはきたない、きたないはきれい。
マクベスのセリフをこの作品に捧げます。