奈月沙耶文学の原点にして代表作

 けだし、奈月文学の特徴を考察するならば……、などという文章が書ければ良いのですが、私ごときに書けようはずもありません。
 私に出来るのは、読書感想文を書く小学生よろしく、自分の思ったことを書くことしか出来ません。

 本作は、奈月先生が高校生の当時書かれた小説に、加筆等を施した作品だそうです。高校生当時の文章をそのまま使ってある箇所も多いらしいです。

 物語としては、スタートは学園コメディだったらしく(えっ?)、でも終わりを迎える頃には、ドロドロ恋愛群像劇の様相を呈しております。
 私の個人的な好みで言えば、『甘々のラブコメ』が大好物なので、拒絶してもおかしくはなかったはずなのですが、カクヨムの中でも、かなり気に入った作品のひとつになっています。
 なんでかな〜、と考えてみまして、ドロドロ恋愛に入る前に、複数のキャラクターに対して感情移入が出来たことが挙げられるのかなと存じます。
 お気に入りのキャラクターは、船岡和美ちゃん、小暮綾香ちゃん、錦小路紗綾ちゃん、榊亜紀子さん。
 男性キャラクターでは、村上達彦さんが一番好きで(えっ!)、あと宮前仁くん、志岐琢磨さんなどなど。本来、私は不良キャラは好きじゃないんだけれど、本作では何故か魅力的に見えました。みんな、悪いことしてないですからね。
 宮前くんなんか、もうちょとケンカが強くてかっこよく描けただろうに、本作では三枚目な感じ★

 物語の進み方ですが、『ある1話を読めば一定の情報が入手出来る』というカタチではなくて、いろんなところに、ちょっとずつギンギラギンにさり気なく隠されていて、情報が小出しにされるみたいな。
 後で振り返ってみて、『ああ、そういうことだったのか!』と。奈月先生の性癖なのでしょうか?

 本作は最初に登場人物をメモして読んでいけば、大丈夫だと思います。キャラクターは魅力的だし、物語はしっかり作り込まれています。
 実質的な主人公の中川美登利ちゃん(奈月先生的には、池崎正人くんが主人公らしい)の内面についても、後でしっかりちゃっかり出て参りますし。

 高校生当時の奈月先生が書かれた作品がベースになっている本作ですが、既に奈月先生らしい書き方も散見されます。
 そう、言わば奈月沙耶文学の原点なんです。私は文章技術的なことを語れる知識や能力は持っていませんが、見る人が見たらわかるはずです。

 最後に、本作があまり読まれていないのが、私は悔しい。
 奈月先生ファンはもちろんのこと、そうでない人にも、多くの人に読んで欲しい。
 続編が第3部まで続いているし、奈月先生の代表作であると、自信を持ってお奨めします☆ ……まあ、私が自信を持ってお奨めしても、影響力は皆無ですが……★

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