第21話 続!お帰りなさい
第21話 続!お帰りなさい 傍目から見ると、母であると考えてもなお美しい妙齢の女性と、雪のように幻想的な美少女と、炎のような髪と甘いイケメンフェイスを持つ美少年に出迎えられる夢のような場面だが、 メルは何か得体の知れないものを感じ取っていた。 表情は聖母のようなのに、オーラは凍てつく吹雪であったり、 幻想的な容姿から邪悪なオーラがただよっていたり、1番おかしいのはイケメンから神を見るような目を向けられていることだった。 「に、兄さんが目の前に・・・ううっ」 あっ、ついに泣き出した。 「あら、メルじゃないの。お帰りなさい。ふふふ、元気そうで何よりだわ」 と妖艶な笑みを浮かべる母が近づいてくる。 自分の母でなければ見惚れていることだろう。なぜだか言い表せない悪寒がするのは気のせいだろう。おかんだけ(ry 「ぬ?今寒気がしたのだが・・・」 「寒気なのです」 そして最後は、妹のノアである。雪の妖精のような姿はそうそう変わったりなどはしていない。まぁ成長した姿も見てみたいものだけれど。 しかし明らかに変わったのは雰囲気だ。昔(といっても半年ほど)は俺の後ろをとことこついてくる生まれたてのヒヨコみたいだったのだけど、今は、腹のなかに獣を飼ってるんじゃないかと思うぐらいしっかりした淑女を思わせる。ニイチャンセイチョウシテテウレシクオモイマス。 「兄様お帰りなさい。寂しかったのですよ? それと後ろの女性は誰ですか?」 可愛らしいという言葉が似合う笑顔を向け、少し安堵したのもつかの間、後ろに立っているパーティのことを言及するときには別人のようなまるで縄張りを守ろうとする獣のような雰囲気があったのは、きっと気のせいだろう。 「あぁ、俺を見つけた冒険者で「ならば報酬を渡して帰ってもらいましょう。ロザリアお願い」っておい!」 「ぬ?」「です?」「・・・zzZ」 俺たちの関係を伝える前にロザリアがシルフィたちを連れていってしまった。ユティは相変わらずマイペースだったのでメイドに運ばれていた。あ、俺の拘束(人)は城門についたとこで外されましたよ。 「こんなとこではなんですから、中に入ろうっす。王妃様よろしいですか?」 「ええ、問題ないわ。中に入ってお茶でも飲みながらゆっくりお話しましょう?ねぇメルちゃん?」 うわ、これ怒ってるなぁ、お話とやらが会話によるものだと信じたい。 「お兄様、ほんとっーに久しぶりです。」 「兄さん、色々とお話したいことが・・」 ロザリアとヘドルトの家臣の次は妹と弟に腕を取られた。さすがに浮きはしないけど、ガッチリ組まれている。 「おいノア、匂いを嗅ごうとするな、レイクは泣くな」 冒険者をしてたので匂いどころか身だしなみも怪しいのに、執拗にクンクン嗅がないで欲しいし、レイクはなんで泣いているのだろうか? 「あらあら、二人ともお兄ちゃんに会えて嬉しいのねぇ。ふふふ、こんな子たちを置いて出て行く親不孝者は誰かしら〜?」 「母さん、その辺についても中で話すから地味に心を抉ってくるのやめてもらえません?」 「あら〜私はこの数ヶ月心を痛め続けてきたのだけれど・・・その辺についてはどう思うのかしら?」 「わかったって!悪かったよ母さんも、ノアもレイクも、何も言わず飛び出してごめんって!」 「ふふ、いいわよ〜それじゃあ中に入りましょうか。」 「許してあげます。」 「?兄さんは好きにしてていいんですよ?兄さんの願いは僕が叶えますから!」 ちょっと何を言ってるのかわからない。 2人の許可と1人の想定外を受け俺たちもシルフィ達に遅れて城の中へ入る。 「「「「「「「「おかえりなさいませ」」」」」」」 王都に入る前と同様に、家臣達が出迎えをしてくれた。ここにいるのはほとんどが見知った顔で、少し安心したような気持ちになる。 「遠いところから、来たのでしょう?お風呂に入って着替えてらっしゃい。あなたたち、メルをお願い。」 「「「「はっ」」」」 数人のメイドに担がれてお風呂に行く。もはや信用はないようで、歩かせてくれない。階段を上がり風呂場へと運ばれる。 我が家のお風呂はとてつもなく大きい。民衆用の大浴場と同じくらいの大きさで、個人用なのだ。装飾や、景色にも配慮してあり、伊達に王城のお風呂はではない。 一体どうやって入ることを想定してるのか。普通に泳いでも大丈夫なぐらい大きい。 その理由は・・・・・ 「「「「メル様お身体をお流しします。」」」」 「お断りします。」 こういうことなのだ。初代勇者は複数の女性を娶ったようで、このように複数で入ることを想定とした造りになっている。 普通、1人か2人が王族の手伝いとして入ることはあるが、俺の場合はなぜか子供の頃からお手伝いが割り増しで多い。 「「「「わ、私たちのことが嫌いになったのですか・・・ヨヨヨ」」」」 「あからさまな泣き真似すんな!もうそんな歳じゃないの、俺1人で入れるし、脱走とかここじゃできないだろ?」 「そうです!脱走されないように見張らなくては!拒否権はございません!」 いいこと思いついたみたいな顔して言われてもな・・・ 「とにかく全力を持って拒否する!」 「あらメル様、メイド長に鍛えられたメイド4人を相手に勝てるとお思いですの?」 メイド長はロザリアだ。 無駄にレベルの高い試験と訓練を乗り越えたものだけが王家のメイドになれるらしい。 とてつもなく大変らしいがそれを余りある職場環境なので人気は絶えない・・・らしい。 「う、うぐ・・・」 何か言い訳を言おうにも、前科のある俺ではなかなか反論しづらくそうこうしているうちに、 「お覚悟を!・・・」 「や、やめろぉおおおお」 「もうお嫁にいけない・・・シクシク」 「はぁ・・お疲れ様でした。」 「ふぅ、、綺麗になりましたよ」 「ほぅ・・満足です」 普通男女逆ではないでしょうか。この世の中は女性がたくましすぎると思う。 げっそりとした俺とは違ってメイド達はツヤツヤしていた。 「はぁ、もうこのまま寝ようかな疲れたし。」 「そうはいきません。王妃様がお待ちです。 お食事の準備も整う頃ですのでもうしばらく我慢を。」 「・・だ! ・・・・・と。」 「・・! ・・・り・・い!」 冒険者より精神的に疲れるよここ、と思っていると遠くから声がしている。見渡す限りの視界にはいないので階下からだろうか? 向かってみると見慣れた奴らが言い争っていた。 「だから、メルど・・メルファリア王子とは知らない仲ではないと言っておろうが!」 「そうなのですう!こう見えて私も偉いのです!扱いの改善を要求するのです!」 「・・・まだ・・美味しいご飯・・・食べて・・・ない」 「あなた達には報酬を渡してお終いです。訳のわからない妄言を繰り返し、駄々をこねるのなら実力行使に出ますよ?」 ノアの声に続き ザッという音とともにメイド部隊が並ぶ。 「ほう、数多の魔物を狩る私たち相手に実力行使とは、笑わせてくれる。どうなっても構わんのだろうな!」 「ですぅ!」 「・・・消し炭・・なる?」 一触即発の雰囲気だ。親父がいたら全員まとめて地獄の特訓コース行きだぞ。 「だぁぁぁ!待て待て!お前ら、もう少し後先を考えろ! シルフィ達は、王族相手に喧嘩を買うな!指名手配されるぞ! ノアも喧嘩を売らない! 俺を届けてくれた恩人だし、知り合いってのもホントだから!」 「お兄様?! ・・・そうですねまぁお兄様がいうのでしたらここは引いて差し上げます。」 本当いつからこんな好戦的な子になったんだろうか。数ヶ月前と別人じゃない? 誰だよこんな風に育てたの。ちらっと見渡すとロザリアだけが目を泳がしてそっぽを向いた。あとで懲らしめておこう。 「ぬぅ、せっかく国内随一と名高い戦乙女達と戦えると思ったのに。」 お前は好戦的すぎなシルフィ。 「・・ご飯」「なのです!」 お前らはブレないな。 「とにかくこいつらも食卓に連れて行くから、母さんにも紹介しないといけないし。ほらいこーぜ。」 「(雌豚どもが、害虫は駆除して差し上げます)」 「ん?何か言ったか?」 「いえ! 久しぶりにお兄様に会えて少し舞い上がっていたみたいです。 さぁ、行きましょう。」 と俺の左腕にくっついてくる。 「!これ見よがしにこちらを見てくるのです!なんだかむしょーに腹立つのです!」 「ぬぅ?なんだ挑発だけと言わず戦ってもらえると嬉しいのだが・・・」 「・・・ご飯♪・・・ご飯♪」 どこにいても騒がしい奴らだ。一応王族相手なのに全然物怖じしないしな。肝っ玉が据わっているのか、馬鹿なのか。後者だと嬉しいです。はい。 扉を開け中に入ると、そこには王国中から取り寄せられた、旬の食材をふんだんに使った高級料理が所狭しと長いテーブルに並べられていた。 「「「・・・・ゴクリ」」」 3人とも目の前の光景に思わず唾を飲んだ。 それもそうだろう。俺たちが普段食べられるのは、ギルドのおっちゃんが作る酒場飯か、女将のとこの、ご飯のみだ。美味しいがとても高級とは言えないし、そんなものは食べれるほど懐に余裕がない。 「さぁ、では夕飯にしましょうか、冒険者のみなさんもどうぞ遠慮なく召し上がってくださいね。」 母とレイクが行儀よく座っているのを前にして3人はお預けを受けている子犬のような表情をして席に着いた。 ・・・もうこの料理だけで3人は使い物にならないような気がする。 説得は俺1人かぁ・・・言いくるめられるかな。 ん?そう言えばマリアとかどこいったんだろう。 まぁあとで聞いてみるか、それより母さん達を説得しないとな。
=========閑話=======
ノア「斯くなる上は・・・暗殺を考慮に入れなさい。とりあえず睡眠矢を打って様子を見ましょう」
メイド「はっ!」
キィン!
シルフィ「ぬ?なんか当たったか?」
ノア「へ?矢が効かない?何を馬鹿な・・・ならば飲み物で経口摂取を狙いなさい!」
メイド「おまかせを!」
リリ「むむっ!邪悪を感じる、なのです!キュア・ステル!」
ノア「はぁ?! 城全体が浄化されて毒物が全部使えない? ならば・・私が出ます。」
ユティ「・・・?なんか変な魔法・・・えい」
バシュッ
ノア「・・(そんな、空間ごと移動する大魔法を片手間に打ち消すなんて・・・危険な人たちですわ!)」
やんごとない奴らのやんごとない生活。 ムー @doctor-chopper
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