何が幻覚か、何が現実か読み進めていくうちにわからなくなっていく。現実だと思っていたものが幻覚であったり、幻覚だと思っていたものが現実であったりする。しかし、たとえそれが幻覚であったとしても、その時その瞬間に感じた恐怖だけは確かにそこにあり、その恐怖は心の奥底にじっとりと染み込み、そして私たちの現実を次第に捻じ曲げていく。この物語には、恐怖が息衝いている。
真夜中。外を歩いているとふと何かの存在を感じる。もちろん何もいないが、瞬間、闇の不気味さを感じて悪寒が背筋を撫でる。そういう「何か」を感じさせる息遣いが、この物語には潜んでいる。ホラーとし…続きを読む
一人で下校できないくらい、誰よりも恐怖を恐れる七子。恐怖を求め続ける正木先輩は、美しい笑顔で、七子に付きまとう。この世ならぬ幻覚を見る七子は、恐ろしいものに囲まれているのに。それでも七子と正…続きを読む
小説に限らず、ホラージャンルにおいて人体を恐怖発生装置にするとどうしてもゴア要素に引っ張られてしまい作品自体が飲み込まれてしまう危険があるのだが本作では恐怖という感情に主軸を置くことで発生装置のまま…続きを読む
とても恐ろしく、美しく、そして……優しい、物語です。この作品は夜のように静謐な一枚の絵画。描かれているのはある一人の少女・七子と、彼女を取り巻く世界。彼女の傍にいるのは、恐怖を好む、美しいひ…続きを読む
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