何が幻覚か、何が現実か読み進めていくうちにわからなくなっていく。現実だと思っていたものが幻覚であったり、幻覚だと思っていたものが現実であったりする。しかし、たとえそれが幻覚であったとしても、その時その瞬間に感じた恐怖だけは確かにそこにあり、その恐怖は心の奥底にじっとりと染み込み、そして私たちの現実を次第に捻じ曲げていく。この物語には、恐怖が息衝いている。
人が夜に身近に感じる恐怖というものに対して真摯に向き合った作品です。物語は恐ろしくて、でもどこか優しくて、続きを見るのが少し怖いのに、気がつけば次へ次へと見てしまう、そんな惹き付けられる作品です。
小説に限らず、ホラージャンルにおいて人体を恐怖発生装置にするとどうしてもゴア要素に引っ張られてしまい作品自体が飲み込まれてしまう危険があるのだが本作では恐怖という感情に主軸を置くことで発生装置のまま…続きを読む
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