そういえば今日から化け物になった

@nattinnn

第1話

ザッ・・・・ザザッ・・・・・同期を確認・・・・・・これより最しゅ・・・・ザーーー・・・・次こそ・・ザザーーーーーーーー・・・・



・・・・今日もどこからか聞こえてくる謎のノイズ音で目が覚めた。


アナログの目覚まし時計を確認する、まだその針を震わせるまでには充分過ぎるほどに猶予がある。


「はあ」


このノイズ音にはもう今まで何度眠りを覚まされたことだろうか。昔は一ヶ月に一度あるかないかだったが、最近はひどい、ほぼ毎日なのだ。


「フアァ〜」


思わず口から欠伸がこぼれる。非常に眠い。しかし、二度寝の出来ない質であるためもう起きてしまうしかないのである。


僕以外にこのノイズ音が聞こえたことはないもんだから家族に話しても取り合って貰えないし、僕自身もどうしようもないと諦めてしまっている。


だからといって何もしないでいるのは癪なので目覚ましが鳴るまでは好きな音楽を聴いたり、新しい音楽を動画サイトから探すようになった。

音楽は良い、嫌なことを忘れさせてくれるし、気持ちを高ぶらせてくれる。何曲も何曲もパソコンが自動で関連楽曲を流している。 眠いけど気分は悪くない。


そうしているうちに今日も身支度をしなければならない時間になった。現実界に引きずり戻される。今から怪ノイズなんかよりうんと憂鬱な学校に行かなければならない。天気を確認するためニュースをつける。


「おはようございます。本日は一日中晴れるでしょう、また、巨人兵在区は一段と電波が乱れるため電子機器の使用は困難となるでしょう、ペースメーカーの方は巨人兵在区になるべく近づかないようご注意ください」


プツン・・・はあ・・・


僕の気持ちなんて知らず空は晴れるらしい・・・行こう、行かないと家族に心配をかけてしまう・・・。

重い腰を上げ、少し大きい制服を身にまとわせ、カバンを肩にかける。左手には音楽プレーヤー、朝は何も食べない。


キュラキュラキュラッ


教室の扉は立て付けが悪く開ける時に高く大きな音を立てる。


皆がこっちを見ている、勘弁してくれ、僕には友達がいない、だから皆の視線は冷たく刺さる。


「ハァ」


僕が自分の席につくと隣りの快活な男子がため息をつく。どうやら陰気な僕のことが嫌いらしいのだ。

いや、彼だけじゃない、クラス全員が僕を嫌っているのだろう。自分のコミュニケーション能力の欠乏を呪う反面、なんでそんな事で嫌われないといけないのかと腹が立つ。

黒いモヤが心を満たしていく。

誰かこいつらを、殺してくれ。

そんな気持ちを抱く自分にハッと嫌気がさす。

イヤホンを耳につけ机に顔を伏せ、好きなバンドの好きな歌を聴く、音楽にたまにノイズがかかる。

あぁ、このままどこか誰も知らな 「オイ!!!」


体が一本の芯が通っているかのようにピンと起き上がり、慌ててイヤホンを取る。


「オラ、池辺!!!オレサマが呼んでるんだよ!!一回で返事しろ!ボケ!!!!」


隣のクラスのイジメっ子の山崎 万次が朝から僕のところにやって来た。

今日はいつにも増して機嫌が悪いようだ。


「ちょっとツラ貸せオラ、おう、委員長こいつ借りてくぞ」


勿論委員長は止めてくれるはずがない、保健所に連れていかれる子犬のごとき僕はヤンキーの溜まり場の定番、体育館裏に連れてこられた。


「朝からタバコをお前んとこの担任に取られてむしゃくしゃしとるんじゃ、殴らせろ」


・・・意味がわからない、タバコを取ったのは担任だ、僕じゃない、きっと人と喋るのが苦手な僕なら誰にもチクリはしまいという考えからの行動なのだろう。こいつもか。こいつも僕が喋らない事を・・・


ドカッ


頬を思い切り殴られた、痛い。殴られた部分がどんどん熱くなっていく。


「お前をボコボコにすると、俺は気分が晴れるんだお前は俺の役に立ててるんだ。幸運に思え。」


そう言って今度はみぞおちに拳がめり込む。息が出来ず、その場に崩れるが、暴力は止まない。


どうして、どうして、どうしてどうしてどうしてどうして・・・・だんだん意識まで遠のいてきた。山崎の顔をやっとの思いで見上げると、山崎は笑っている。


「人間サンドバッグ昔から欲しかったんだよ、今日だけじゃなくて、これからもむしゃくしゃしたら殴らせろよな」


これからも?やまぬ暴力の中、消えゆく意識の中、あの音が聞こえる。


ザッ・・・・ザザッ・・・・・同期完了・・・・・ザザッ・・・・機体に損傷を確認・・・・・敵を補足・・・・・殲滅・・・・ザザーーーーーーー・・・・


いつもならうっとおしいノイズになぜか安心する、意識はしっかりしているし、なぜか痛みは引いている、そしてなにかに操られるように自分の右手を広げ、山崎に向ける。山崎はこの突然の一連の事に驚いているようだ。目が大きく開いている。


「何生意気に立ち上がってんだよ!まだぶちのめされt


言い切る前に、右手から白い光線が放たれた。その光は山崎を確実に捉え、その背後の住宅街まで包み込んだ。


見る限りその方向から一切がなくなった、焼けたとかではなく無くなったのだ。


遠くでおどろくほど大きな音がした。


これは、僕が世界を救うまで続く物語。

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