この作者の方は、女性を魅力的に描く女流作家さんだ。
主人公の花南(カナ)は、一見して男を虜にする魔力を持っている。
簡単に恋には堕ちない。けれど、瞳の力が情熱的。
冒頭から、その生き生きとした色香に包み込まれる。
それは仕事振りにも発揮されて、ガラス職人としての描写も素晴らしい。
自由奔放に見える彼女が、いつも何かに縛られているように見えたのは
自分とは逆な、姉のせい。ある理由で旦那と息子を残して死んだ。
その理由を読んだ時、かなり戸惑ったけれど、それ以上に
彼女と姉の旦那である義兄との関係が気になって、読み進めて良かった。
最後までブレナイ、丁寧で隙のない作りの本格的な作品だ。
作者さまの作品を読むのは二回目になります。一作品目にて、丁寧な心理描写、脳裏にイメージが浮かび上がる情景描写、物語に引きずり込む多彩な仕掛けを体験していましたが、本作品でもその魅力は十二分に発揮されてました。
物語は、やや複雑な人間関係が絡む恋愛ドラマです。あえて詳しくは述べませんが(詳しく書くと、ある場面での涙するシーンが損なわれますので)、本作品の特徴を紹介したいと思います。
本作品には性描写が含まれますが、よく読みますと、単なる性描写でないことに気づきます。一見するとよくある男女の交わりに見えますが、すでに仕掛けは始まっていて、一気に物語に引きずり込まれていきます。物語が進むにつれて、交わりも形や色を変えていき、それが互いの心情を表しているようで、時には胸が苦しくなるような気持ちに見舞われます。
物語のキーとなる『秘密』については、恐らく衝撃を受ける方も多いかと思います。しかし、この『秘密』をありのままに受け入れることで、人間関係がより際立ち、更に深い感動を味わうことができるようになっています。
本作品の最大の特徴は、登場人物がいないことです。いるのは、役割を与えられたキャラクターではなく、それぞれの人生を歩んできた生の人間たちです。そのため、都合のいい展開は一切ありません。だからこそ、主人公のカナの姿や義兄の苦悩に共感し、涙すると思います。
最後に、本作品の一番の見所を紹介します。主人公のカナが中盤である場所で暮らすことになりますが、そこで描写される景色、心情は、圧巻の一言です。現実の世界なのに、幻想の世界に連れていってもらえます。
素晴らしい作品と胸が震える感動の連続だった読書時間、本当にありがとうございました。
感動と涙保証の本作品、自信を持ってみなさまにオススメします!!