行動は感情を規定する。
そしてその行動は、技術や社会が規定する。
そんな現代社会の行き着く先を描いた短編です。
冒頭、主人公は疑問に思います。
姉の葬式で泣く私は、悲しいから泣くのだろうか、泣くから悲しいのだろうか。
もし、泣くから悲しくなったのだとすれば。
思考は加速し、感情の由来を探っていきます。
現実の延長として高度な監視と医療を備えた本作の社会は、人の形質そのものを変化させます。
それは最適化・効率化を繰り返し徐々に人を均一にしていきます。
この流れが進めば、誰もが同じ体で同じように行動し、同じ感情を抱くはず。
だとすれば、彼我を別つものは何なのだろう。
他者と同じように感じた気持ちを区別し、愛しい人と自分だけを繋ぐ「何か」が無ければならないはず。
そうして見出されたのが21グラムの不可視の器官。
すなわち魂。
現在、人という存在は粛々と解体されています。
そんな世の中にあって「魂」という概念が廃れない訳が、わかった気がします。