21グラムの慰め

作者 きづ柚希

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★★★ Excellent!!!

葬儀シーンから始まる物語は主人公が姉に「泣くな」と諌められるところから始まります。

レビューのタイトル(本文から抜粋)はアメリカの心理学者ジェームズ・ランゲがおよそ130年前に
唱えた人の「情動の原因を何とするか」について、
身体変化の認知が情動を生むというジェームズランゲ説によるもの。

本作品は現在からおよそ30年以上先の未来を舞台にしており、
監視社会、遺伝子操作等のディストピア化した社会風景の中で、
人々は順応し、時には葛藤を抱えながらもそれらを受け入れ生きている様が描かれており、
読み進めるうちに「これはSFというジャンルなのだろうか?」と不思議な感覚に陥りました。

社会が変わり、人体が変わった未来においても「魂」という21グラムの不可視の器官が持つ、
ある種の「尊厳」は変わることなくあり続ける。
そんな未来を見た気がします。

★★★ Excellent!!!

ナノチューブによって人々の思想・言動・行動が管理される世界。
その挙句に人々はデザイナーベイビー技術を用いて自らの子を新たな時代に適応するようにデザインする。

自分と全く似つかない子供を生み出していく。

様々なモノが希薄になる世界に措いて魂は慰め足りうるのか?

★★★ Excellent!!!

行動は感情を規定する。
そしてその行動は、技術や社会が規定する。
そんな現代社会の行き着く先を描いた短編です。

冒頭、主人公は疑問に思います。
姉の葬式で泣く私は、悲しいから泣くのだろうか、泣くから悲しいのだろうか。
もし、泣くから悲しくなったのだとすれば。

思考は加速し、感情の由来を探っていきます。

現実の延長として高度な監視と医療を備えた本作の社会は、人の形質そのものを変化させます。
それは最適化・効率化を繰り返し徐々に人を均一にしていきます。
この流れが進めば、誰もが同じ体で同じように行動し、同じ感情を抱くはず。

だとすれば、彼我を別つものは何なのだろう。

他者と同じように感じた気持ちを区別し、愛しい人と自分だけを繋ぐ「何か」が無ければならないはず。

そうして見出されたのが21グラムの不可視の器官。
すなわち魂。

現在、人という存在は粛々と解体されています。
そんな世の中にあって「魂」という概念が廃れない訳が、わかった気がします。