惑星伝記 another story's 忘れられた皇子
日常 文人
プロローグ
王国歴506年、
異星人は強く、多くの命を
あれから少しばかりの時が流れた王国歴539年…。
共同戦争の英雄は、一大国の皇帝となっている。
その国は、獣人たちの国。土人の国。アニマ連合国。等と呼ばれている。この世界で一番広大な国土を誇り、そこに住む部族の種類と総人口においても、他国よりも抜きん出ている。弱肉強食のシンプルな掟と、強い家族愛による情愛で統治されており、小競り合いは絶えないが、異国の敵には一枚岩の団結を発揮する大国だ。
―――。
アニマ連合国を流れる2本の恵みの大河…その北側の大河ドロップティアの第二分岐点付近、アプト川とロロト川に挟まれた
グレンは、座り心地がよさそうなソファに寝そべりながら、書面に目を通していた。
眠気によって細くなる眼を
「部族内選考の年じゃな…どれ、少しばかり遊んでやろう!誰か
低く太い声を上げながら、少し身体を伸ばして座り直した。
「それでは
「いや、兄貴。俺が先だ。親父!先に俺とやろうぜ!この間は兄貴からだったからな!」
「分かった。
ため息をついて
「いや、よい。アレン、儂は皇帝でも有るが、ぬし等の父であることも事実じゃ。身分は流動 的なものだ。
「荒野で!」
「いいだろう。では荒野の闘技場は行こう。何番だったかな?」
グレンはそう尋ねながら立ち上がる。
「荒野の闘技場は、2番です。」
アレンも答えながら腰を上げた。
三人は揃って、闘技場へと向かった。
闘技場について、アレンが受付に声をかける。
「これは皇帝に皇子たち…。おや?第三皇子は御一緒ではないのですね。」
「今、弟はレオムへ使いを頼まれている…。ところで、2番を使いたいのだが…。」
「2番ですか…今は先客が使用しております。次に予約しておきましょう。待たれている間、 観戦されていかられますか?」
「うむ。せっかくだ。観戦しよう。父上はどうなさいますか?」
「儂も観戦しよう。」
「じゃ、俺も。何と何が戦ってんの?」
「では、お三方とも観戦ですね。今は、
「ふーん。そりゃ犀族だろ。天候指定は?」
「天候は晴れですね。風もない状態です。」
「見晴らし良好。そりゃ、
「…。では、あちらの通路からどうぞ。」
通路を進むと実況と解説、歓声が大きくなってくる。
「あぁーーーーー!っと……は?…当たらない!<実況>」
「賑やかになってきたな…兄貴、賭けようぜ。俺は犀族の勝利に今夜のメインディッシュを!」
「卑怯だな…だが、まぁ受けてたとう。では俺は狼族だな」
真面目なアレンの顔も闘技場の熱気からか?ほぐれてきて少し笑っている。
闘技場につながる扉を開けると、今日は通常よりも観戦客が多かった。
「なんだ?なんだ?注目カードかよ?」
想像以上の熱気にカインは驚いていた。
「強い。強いぞ!決闘士ググンの攻撃が一つも当たらないッ!犀族の突進は決して遅くありませんッ。それを上回る圧倒的
「騒がしいな。ん?あれは?ふふふ。カインよ。
「はぁ?狼族が序盤に攻撃をよく
「普通なら…な。父上の言うとおり、今回は俺の勝ちのようだ。見てみろ。」
「あ?兄貴までかよ!何だよ…あ?あの狼!
「うむ。獣化で言えば10%も満たんじゃろう。…かなりの力量差よのう。」
「んだよ?アイツ…。」
「よく見ろ!弟よ。お前もよく知った奴だぞ。」
「あ?…げ!パロメかよ!納得したぜ。あーー!もう!何で闘技場に居んだよ!こりゃ確かに賭けは俺の負けだ…。あいつを倒せる戦士は、闘技場にそうは居ないよな。観客も多い
カインは、
「おっと!!!戦いに夢中で気づきませんでしたが、観客席の入り口付近に見えるあの姿は…我等がアニマのエンペラーーーぁぁーーー、獅子王にして、英雄皇帝グーーレーーーンーーーー!!その人ではないだろうかぁーーーーツ!!?<実況>」
「いや、あれは間違いなく英雄皇帝その方ですね。皇子の御二人も一緒のようです。<解説>」
「これは、戦士パロメの実力を見に来たということでしょうか?<実況>」
「どうでしょう?それは分かりませんね<解説>」
実況の声で、パロメは皇帝たちの存在に気づき、戦いを止め、サイ族の戦士に背を向けて皇帝たちへ深くお
「あ、決まった。早業だな。」
アレンが
「あーーーーーーーーーッと決着。これは
「いや見事でしたね。戦士ググンが、戦いの最中に背を向けられたことで
パロメは3人に深々とお辞儀して退場していった。
「じゃあ、行くか!カインよ!続け!」
グレンは、30mはあろう観客席から闘技場へ跳び降りた。
「派手好きかよ!エンターティナーだな…嫌いじゃない…ぜッ!と」
カインも続いて、荒野の闘技場に降り立った。
「おーーーーーッ!お次の対戦カードは、英雄皇帝グレンと皇子カインなのか!!これは目を離せない。
「なに…なんでもない…ただの暇つぶしじゃよ。」
グレンは目を細めて、
「獣化は?何%が得意じゃったか?」
「何%でも苦手じゃねぇ…。面倒だから100%で!!手加減なしで来いよ!!親父ッ!!」
「ほう?強気じゃな…。猛々しい戦士だ。好い。じゃあ100%でいこうかのう。」
二人のやり取りを聞いたアレンは、放送席に足を運んでいた。
アレンから事情を聞いた運営は、すかさずアナウンスをかける。
-<サイレンが鳴る>相互に完全獣化の闘いとなる模様です。戦士試験を通って居ないものは、原則観戦禁止となります。どうしても観戦になりたい方は、ぶっ倒れても自己責任でお願い致します。繰り返します…。-
ギョッとした顔となる観戦客が半分近いものの、興奮が収まらない観客席。残って観る!と暴れる子供を引きずって会場を後にする者、意気込み腕を組む者、気圧されないように自身も獣化する者と蜂の巣をつついたような状態だ。
見かねたアレンが拡声器を借りる。
「突然お邪魔して申し訳ない。皆様!一度、深呼吸なされよ。慌てる事もない。落ち着いて。それから…放送席から失礼いたしますが、皇帝にお願いがございます。
アレンの声に落ち着きを取り戻した観戦席は、準備が整ったようだった。
「さて、お待たせいたしました!勝手に実況させていただきます。実況はお馴染み、噂話にゃめっぽう強い。口の悪さも一級品!腕っ
「…引き受けよう。」
「では、こちらは準備万端!国内トップクラスの闘いに興奮を隠し切れません!」
「外野は盛り上がってんなぁ…。始めるぜ?親父?」
「いつでも。何本だ?」
「んなもん!勝負はいつでも一本勝負だろうがぁ!」
二人は、人の姿からみるみると
「ガァぁぁぁ…ゴるぅあぁぁぁ――――。」
カインが吼えながら、グレンに鋭い眼光で駆け寄り、両前脚を突き出して牙を剥き出し、跳び掛った。
カインの
実況も失神寸前で口は動くも声にならない。拡声器で全体にアレンの声だけが獅子吼に続いた。
「大変、申し訳ない…。」
惑星伝記 another story's 忘れられた皇子 日常 文人 @Nichijyo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。惑星伝記 another story's 忘れられた皇子の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます