指さすだけで全てが分かる世界の恐怖!

 この作品は、SFショートショートの傑作として文句なしの出来栄えです!

 「指さした対象の情報が即座に頭に入る」という超シンプルな設定を、徹底的に転がした発想の勝利。S博士と助手の軽妙な会話劇で進む実験風景が、最初は「便利そう!」と思わせておいて、最終的に背筋が冷えるオチまで一直線です。
 特に秀逸なのが三つの「つまみ」設定!解析精度・曖昧度・情報源を調整して、「椅子」すら正しく認識できるようになる過程の小気味良さは、まさにSFガジェットの醍醐味。博士の人物診断が辛辣に暴露されるシーンでは、笑いと戦慄が同時に襲ってきます。
 そして圧巻は「妻を指さした誤操作」のオチ。知りたくない情報まで知ってしまう恐怖で、ユビキタス技術の光と影を一瞬で理解させる構成力に脱帽です。現代のプライバシー問題や情報リテラシーを、説教臭くなく物語で考えさせてくれる巧みさ!
 完結のショートショートなので、通勤・通学のスキマ時間で一気読み可能。中学生から大人まで楽しめる分かりやすさでありながら、哲学的な深みも持つ良作です。
 SFアイデア好き、ブラックユーモア好き、そして現代のデジタル社会に一石を投じる作品を求める方には絶対におすすめ。便利さの「副作用」を軽やかに体感してください!