第19話 超越した男
「フ‥‥‥ハッハッハッハッハ! これで、遂に、オレを封印した奴を殺せるぜ…‥ハッハッハッハッハ!」
テスタの体を乗っ取ることに成功してしまったカルネージャ・グワールは、目的の第一段階をクリアして、高らかと笑い声を張り上げた。
その体の持ち主のテスタ・ディヴァインは、先ほどの
そこから出るには、圧倒的な精神力、魔力が無ければ脱出不可能だ。真っ暗なその空間は、死ぬことも出来ない完ぺきな監獄と化している。
破壊魔導書カルネージャ・グワールも昔、この世界で言う英雄と呼べれている3人の人間に、深い闇へと封印されたことがあった。
もちろん出ることもできず、死ぬこともできない完全な空間。だが、テスタ・ディヴァインという、力を在り余している器を見つけたことで、自分の空間を作り出し、体を乗っ取ることに成功したのである。
ケルベロスが最初口にしていた剣は、英雄が封印の代償として使った、神器だそうだ。
聖剣よりも魔剣よりも強い、神器と呼べれるものは人間には使用不可能とされている。
そのため、世には知られていない。
カルネージャ・グワールはまず目の前の学園の破壊しようと、魔法を展開する。
ケルベロスの必殺の技とされる
威力はこの国が消し炭になるのは確実とされる威力だ。
器に魔力が壊滅的になかったので、魔法の暴発はできない状態でいるのだが、その状態でもこのような禁呪を連発するほどの魔力を持っている魔導書なのだ。
展開に詠唱要らず。ドの魔導書も自分が展開可能な魔法は無詠唱で展開することが可能だ。
カルネージャ・グワールは、この世界にあるすべての魔法を使用可能だ。
それは、全ての魔法を無詠唱で展開できるのと同じ。
それなのに、なぜ英雄たちに封印されてしまったのか。
騙されたのだよ。英雄たちはカルネージャ・グワールという、人間をまだ温厚な生物として見ている人型魔導書を、深い闇に封印したのだ。
それは、英雄たちの独断の選択だった。だから、この破壊魔導書の存在は知られていない。
カルネージャ・グワールは、自分の魔力の流れに慣れて、魔法の展開を始める。
まだテスタがおかしくなったのに気付かないルナは、スターキャットに近づこうとしている。
そのスターキャットは、テスタの体からいきなりあふれ出してきた計り知れない魔力の量に、恐れをなしていた。
だが、カルネージャ・グワールもある男の存在をなめすぎていたのだ。
精神力? 魔力? その男は、神をも超越してしまう精神力、力を持っている。
常識など通用しない男に、魔法など通用しない。それこそ常識だ。
今までその男が動かなかったのは、魔法の反動が大きすぎて気を失っていたのだ。
この、都合が良過ぎる力は、誰も破壊できない。
この、破壊魔導書でも‥‥‥
「
展開が終わってしまったカルネージャ・グワール、学園の本校舎に向けて、魔法陣を展開した。
大きさは、本校舎を中心として展開されて国を包み込むほどの大きさ。
これは、国が動いて処理に向かうほどのレベルだ。
ルナも異変に気付き、テスタの体の方に向いた。
「何‥‥‥してるの?」
その言葉に気付いたカルネージャ・グワールは、ルナの方へ向き、二重展開をする。邪魔なものは徹底的につぶすのがカルネージャ・グワールの主義だ。
女でも関係ない。人間への恨みは全てを闇に葬り去る。
展開したのが自分だとバレることがあってはならない。それを阻止するためには、手段を択ばない。
全てを殺し、破壊しつくす。それが、今のカルネージャ・グワールの生きる意味。
人を殺すにも禁呪を発動する。禁呪の何重展開も可能とするのは、人間への底知れない恨み。
英雄が人間だったかもわからない。だが、英雄はそう名乗っていた。人間だと。
だとしたら、敵は人間である。
「二重展開。
この時、ある男が覚醒した。
友の死をそのまま見届けるほど、馬鹿でクズな男ではない。
どこからでも這い上がり、記憶を呼び覚ます。昔、テスタ自身が人を助けることが出来なかったことが多くあった。
その過ちを繰り返さぬように、闇を光に変えていく。
どこまで深くとも、這い上がって来る。カルネージャ・グワールは、器を見る目が無かった。
この男を選んだことが、過ちとされる。
カルネージャ・グワールは、自信の体の異変に気が付いた。
それは、カルネージャ・グワール自身の魔力が一切通用しない力だった。
何が起きているか分からない自分の体‥‥‥いや、ある男の体が制御できなくなっていく。
その異変は、自分の目的に大きく支障をきたすものだ。
早く破壊しないといけない。でもできない。
もう一回だ。
「二重展開。
流石の破壊魔導書も焦り始める。
「死ね!」
発動されない。
「
体が動かなくなっていく。
「発動しろ!」
自分の魔力が飲み込めれていく。
「
意識がどんどん吸い込まれていく。
「止めろっつってんだろぉぉぉぉぉ!」
その叫び声はもうカルネの物じゃなかった。
意識がどんどん吸い込まれていき、体が奪われていく。だがその体はもともとカルネの物じゃない。
そしてカルネは心に吸い込まれた後呟いた。
『嘘‥‥‥だろ』
もうその時には、カルネの意識は失われていた。
スターキャットはどこかに逃げていき、ルナもショックで気を失っている。
テスタは、自分でやってしまったんだと思い込んでいて、カルネのせいだとは気づいていない
そのせいで、テスタは自分を追い込んでいく。
自分への怒り、悔み、絶望、それを全てぶつけるのは、目の前の大きな魔方陣だ。
完全に意識を取り戻したときには、国中に警報が鳴り響き、学園の生徒も逃げだしていた。
テスタはルナを抱え込み、前に歩いていく。
どうやって魔法陣を破壊するかなんて考える必要もない。
「ぶっ壊す!」
そう決意したテスタは、ルナを抱えたまま真っすぐ走りだした、行先は学園本校舎の屋上。
そこが中心になっている気がしたからだ。
俺は、ルナを背負って学園の本校舎に向かっていた。
ここまでうるさく警報が鳴るという事は、とても危険な魔法陣なのだろう。
そして中心とされている場所はたぶん本校舎の真上。一番近いところが、そこの屋上だ。
ルナを危険にさらしたくは無かったが、連れて行かないと最悪孤独死となってしまう。
いや、最悪でも生きている。
友を殺すことは絶対にさせる訳にはいかない。
そうは言っても、どうやって屋上にたどり着くかも分からない。
ただ、走るだけだ。
次回に続く
脳筋魔法使いの危険な物理的魔導書(カルネージャ・グワール) 不知火洋輔 @TORAIJIN
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