地上に行きたいお姫様
警官に袋のネズミとされていた鉄平とピケは「何者か」に助けられた。薄暗くて顔を認識できなかったが、ついに薄暗い路地を抜け……
「ふぅ、ここまで来ればしばらく大丈夫ですぅ」
「改めてありがとう、助かったよ」
「いえいえ、ついでですので」
帽子を被っているとは知る由もなかったが、深く被っていた帽子を取って微笑む「何者か」は
「お名前を伺ってもよろしいですか?」
「俺は鉄平、んでこっちはピケ!」
紹介する鉄平に合わせてピケは会釈する。
「そうですか、私はラピスと申します。ところで……」
さらっと自己紹介したラピスが語尾を溜め俯くのでやはり警察に突き出すとでも言い出すのだろうかと不安になる鉄平、ラピスは目の色を変えて次の言葉を発する。
「あなた方は地上から来られたんですよねっ!?」
「えっ……まぁ……」
いきなりギアを入れて物理的な間合いを積めてくるラピスに鉄平が戸惑っているのをピケは気に入らなさそうに見ている。
「ですよねっ! でしたらあのっ、あのっ……ケホッケホッ」
「大丈夫かよ!? 一旦落ち着こうか!?」
「す、すいません……興奮してしまって……そ、それでですね、できるならば私を地上に連れていって頂けませんかっ!?」
「そりゃいいけど……」
咳き込むほど必死で言ってきたわりにはそれぐらいお安いもんだと鉄平は承諾した。
「待って、これはそんな簡単なことじゃない」
「おっしゃる通り、私の身分があれなので……いろいろとこじつけてもらう必要があるんです」
何やら察しているらしいピケは話が分かっているらしい。ただ来た道を引き返せばいいという話でもないようだ。
「ラピス、あなた何者?」
「私は……その……いつも自分で言うのもおこがましいのですが……姫です」
「えっ?」
神妙な面持ちで問いを投げ掛けたピケへの返答でラピスの声量が急に語尾で小さくなったのとまさかの答えに鉄平がすかさず聞き返す。
「ですからっ……この国の姫なんですっ!!」
「うぇ~っ!?」
今度はしっかり聞き取れたその「姫」という言葉に言わずもがな鉄平がオーバーリアクションで反応し、三人の近くで戯れていた猫たちはびっくりして散り散りに逃げていった。ピケはふむふむと頷いている。
「何でそんな人がここに!? 王族ってそこら辺うろうろしてていいのか……ですか!?」
「急に気を使われないでください、普通にお願いします」
「そう……か」
「はい、それでさっきの質問なんですけど実はどうすれば地上に出られるのかと思いましていつもの日課でお城から抜け出して裏関所を見に行きましたところあなた方が突撃してきたというわけなんです」
(それで俺たちが地上から来た人間だって知ってたわけか……それより姫を勝手に出歩かせるなんて城の警備甘くね?)
ラピスが助けてくれた理由と話の早さに納得しつつ鉄平は城のセキュリティが心配になっていた。
「で、結局のところ俺たちはどうすりゃいいんだよ?」
「それなんですが……お父様を説得するのがよろしいのかと……」
「そうだよなぁ」
(いやまてよ、姫の親父ってことは王だよな? する気はないが粗相をしたら……)
俯き気味に父親との話し合いを勧めてくるラピス、話を聞いておきながら怖じ気づく鉄平の心中はお察し状態だ。
「……まぁ、実力行使になればピケもいるしこれも何かの縁だ! やってやるよ! な!」
「借りは返す」
「あ、ありがとうございます!」
地上から来た者としてはなぜそこまで地上にこだわるのか分からないが鉄平はあえて突っ込まないことにした。理由はその笑顔だけで十分だったのだ。
「ってことは城に行けばいいんだよな?」
「はい! 兵の目につきにくいよう裏道で行きましょう! こちらです!」
三人が向かうは国のどこからでも見える巨大な建造物、ラピスを先頭にまた薄暗く歩きにくい道を行く。無事に話をつけることはできるのだろうか……
鉱山ダンジョン~案外地下は深いようで~ ロカク @rokaku123_com
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。鉱山ダンジョン~案外地下は深いようで~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます