地底に広がる未知なる世界
鉄平の父岩鉄率いる鉱山作業員集団「
「危ないから俺が先に行くからな!」
「ウム」
男らしく先陣を切った鉄平をいつもの無表情でピケは先を譲った。
「うわっ!? なんだ、水溜まりか」
「水溜まりでビビるとは、ウケるww」
「笑ってんなよ! ってかビビってねぇから!」
草まで生やしてさも爆笑しているようだが、ピケの表情は口元がわずかに引きあがった程度である。
そんなこんなで進んでいくとレンガ製の建造物に行く手を阻まれた。その門前に甲冑を身につけた人物が一人、だるそうに立っている。
「ちょっと待て、あれ普通に通れると思うか?」
「直接聞いてみるのが手っ取り早い」
「それもそうだな」
遠目に門番の様子をうかがいつつ相談し、二人はとりあえずコンタクトを取ってみることにした。
「あの~……」
「むむっ!? こっちに人が来るとは珍しいのでありますが……ここは関所であります! 通行証は持っているでしょうか!?」
「……ちょっと失礼」
大方の予想通り一筋縄では通れないようで、鉄平はピケを引っ張り門番から距離を置く。
「通行証持ってないよな?」
「トウゼン」
「胸張ってんじゃねぇよ! どうすんだよ!」
目的地はすぐそことも言い切れないがこんなところで立ち止まっていては金鉱脈は夢のまた夢、門番が怪しむような視線を向けてくる中鉄平は考えを巡らせる。
「ここは一旦戻って……」
「一つ手がアル。チョット下がって」
「え? あぁ……ってまさか!? やめろ!」
鉄平の制止も虚しく次の瞬間レンガの建造物は門番もろとも爆発した。
「お前何してくれてんの!?」
「バクハ」
「そうだけどそうじゃねぇよ! これ後々追いかけられるやつだろ!」
「ダイジョウブ、記憶がトブ薬混ぜといた。……イキ止めといて」
「早く言えよ! あぶねぇな!」
さらっと記憶を消されかけた鉄平がピケに抗議しながら走っていると、薄暗い洞窟は終わりを告げた。
「これは……街!?」
洞窟の先には地上とは大差ない文明が築かれており、普通に人間が往来している。
「あの鉱山の地下がこんなことになってるなんてなぁ、ここは一旦戻って報告を……」
「モウチョット見てみたい」
「あ、おい!」
引き返そうとする鉄平の腕を引っ張りピケは街道を進んでいく。
「おいおい、今にもさっきの門番が起きて追いかけてくるんじゃねぇか?」
「テッペーやっぱりビビり、私の腕信じてない」
「信じるどころか不信感が募っとるわ!」
大声で突っ込む鉄平が歩行者に白い目で見られつつ、二人はアーケードを進む。正面には立派な城が見えており、この街は城の周りに栄えた城下町なのだろう。
「テッペー見て」
「お、おぉ……ん?」
ピケの声に鉄平が目をやるとそこにはフリーマーケット形式の
「見つけたぞー! 爆弾女と冴えない男だー!」
「冴えなくねーし! ってそれどころじゃねぇ! 逃げるぞ!」
「あっ……」
結構まじまじと出店を見ていたピケは残念そうにしつつ、手を引く鉄平に引きずられまいと足を動かす。関所を爆破したときとは逆になったわけだ。
(ここで捕まったらどうなる!? 上に戻れるのか!?)
鉄平は地上に戻れるかということを最優先に考えている。
「大人しく投降しろ! キャッチ!」
「うわっ!」
警官が叫んだ直後ピケの腕とそれを引っ張る鉄平の手をめがけて手錠が飛んできた。辛うじて避けたがそれよりも鉄平は手錠の軌道が明らかにおかしかったことが気になった。
ふと浮かんだ疑問を解決すべく一瞬後ろを振り返った鉄平だが答えはなく、次に前を向くと前方からも数人の警官が向かってきていた。
(クソッ、地底に骨を埋めることになるのか……あれ? 字面だけ見るとこれただの土葬じゃね?)
最後の最後で救われそうな結論にたどり着いた鉄平が足を止め、続いて軽く鉄平にぶつかりつつピケも足を止める。もうあとがなくなった二人に……
「こっちですわっ!」
もう手を離そうかというところであったが辛うじてまだピケの腕を掴んでいた鉄平の逆の手を「何者か」が引っ張って横道へと引き込んだ。日の光が射し込まない地底で太陽の役割を担う巨大電灯をもってしても横道は暗く、その人物の顔は見えない。
「あのっ、ありがとう!」
「どういたしましてぇ」
年齢も定かではないがなんとなくそんなに年齢差がないと踏んだ鉄平が感謝を述べると「何者か」は物腰柔らかな言い方で返答するのだった……
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