鉱山ダンジョン~案外地下は深いようで~
ロカク
俺は解せない!(プロローグ)
とあるなんでもないごく普通の昼下がり、この名もない鉱山の麓では今日も鉱山採掘作業が進められている。いつものように作業員達は昼食を終え午後の業務に取りかかっているが、いつもと違うところが一点……
「なんで俺なんだよ! もっとガチムチなやついっぱいいるだろ!?」
「そのガチムチなやつらにはいつもの仕事をこなしてもらわにゃならんだろうが!」
「俺だっていつもの仕事あるわ!」
言い争いをしている男が二人。何かを頑なに嫌がっている少年が
「お前まだ役に立ってな……じゃあ逆にこう考えてみろよ、もしこれで鉱脈でも見つけようもんならいきなり大出世だぜ?」
「マジか!?」
この親子が言い争いの原因となっているのが目の前の洞窟である。仕事をしに来て偶然見つけたものであるが、暗くて先も見えずどこに繋がっているか検討もつかない。ガッポリ稼げる期待もあるが、その反面大小危険がないとは言いきれない。そのため岩鉄は息子を生け贄にしようと言うのだ。
「でも俺になんかあったらどうすんだよ?」
「そんときゃまぁ……お前の死は無駄にしねぇよ!」
「こんのクソ親父ぃ……」
しばらく息子が帰ってこなかったら隠し鉱脈は諦めようと言うことだろう。とはいえ岩鉄も本心でそんなことを言っているわけではない、ちょっと見てこいと言っているだけなのだ。
「んーそうだな……じゃあ誰か一人連れていっていいことにしてやろう!」
「結局ガチムチもいくんじゃねーか!」
「ガチムチ共は忙しいからなぁ……よし、おーい! ピケちゃんちょっと来てくれー!」
「ハーイ」
作業する手を止めて長峰親子に近づいてくるタンクトップ美女は鉄平の一つ年上で先輩のピケである。ピケについて誰も何も知らないが、とある鉱山の洞窟に捨てられていたところを岩鉄が拾った。今では岩鉄の下でバリバリに働いている。
「何デスか親方?」
「いやね、この洞窟に我が息子を送り込もうと思うんだがその息子がびびっちまって行こうとしねぇんだ。だから着いていってやってくれないか?」
「ワタシが? ……まぁテッペーがびびってるなら仕方ないナ」
「誰もびびってねーし!」
ピケは女子でありながら何に対しても臆さない。例えばそこら辺のミミズも普通に弾くし、コウモリにも全く動じない。
「というわけだから協力してこの洞窟を探索してきてくれ! 頼んだぞ!」
「ちょ、まっ……」
作業音が響き渡っているためか鉄平の制止を振り切り岩鉄は作業員達の指揮に戻る。
「はぁ~」
「ほら、テッペーさっさと行く」
最初からずっと気乗りはしないがピケが着いてくることで鉄平の心中から不安は大分取り除かれていた。
「多分面白い事なんもねぇからお前は来なくていいんだぜ?」
「それはワタシのセリフ」
「俺が任されたのに俺が行かなくてどうすんだよ!」
意味のない小競り合いをしながら二人は洞窟内へと足を踏み入れた……
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