現代社会そのものにメスを入れて腹を開いたかのような話ですね。
多様化していく社会においてヒトの価値観はヒトの数だけあり、「正しさ」の定義も同様にヒトの数だけあり、とても曖昧模糊としています。
そんな中で、少しだけ年長者として自己の持つ人としての「正しさ」を揺るがず貫き通せる主人公には、人として好感を持てます。
そんな主人公だったからこそ、なんでもないようなフリをして心の傷を隠し続けてきたヒロインの聞こえない心の悲鳴にも耳を傾け、本音をすくい上げることができたんだなと感じました。本当の等価交換なら、どちらかが傷を負い続けることなんてないでしょうからね。ヒロインはなかなか深い業の持ち主ですが、この作品の女性陣は全員なにかしら裏を抱えているので、今後明らかになるのが楽しみです。
「行ってらっしゃい」と「おかえり」を行ってくれる人のいる幸せって思っている以上に大きんですよね。ヒロインは主人公に与えられてばかりだと良く作中で言っていますが、主人公もヒロインのいる幸せをしっかり感じていて、共依存というべき関係は二人の絆をとても強固なものとしています。
二人の過ごした時間が、二人の紡いだ言葉が、二人の夢見た未来が意味のあるものになってくれることを切に願いながら、読み進める手は最新話までノンストップでした。
最後に、筆下手な自分の文章をここまで読んでくれた方に感謝をば、ありがとうございました。
自分の中に眠っていたりしたもの、あえて意識せずにいようとしたもの、そういったものを掘り起こされ揺すぶられた感じがします。
向き合わずに逃げてきた過去、逃げた先でさらに積み重ねてきてしまった、今となっては向き合いたくない過去。
過去を意識する程度には現状の精神状態に余裕が生まれた証拠なのかもしれませんが、過去を清算する過程は読者として見ているのはいろいろつらいです。ですが、乗り越えられる環境が整えられ、実際に乗り越えていこうとする気持ちには非常に共感が持てます。
これから先、自分の過去と勝負するだけでなく、同居人をとりまく人たちとも折り合いをつけていかなくてはいけないので、大変かとは思いますがくじけないでほしいです。
アナザーストーリーとしての北海道回想編にも期待したいです。
言い出したら恥ずかしいが、私がこの本を見つけ出すきっかけはぶーた先生のイラスタだ。すごくかわいい子と思って、思わず電子書籍を購入した!しかし、読めば読むほど、紗優の辛い過去に胸が刺されたような心苦しい気持ちになった。そんなに賢い、礼儀正しい女の子はどうしてそんな目に会わなきゃいけないだろ。後藤さんも、三島さんもいろいろ過去があるものの、私のエゴかも、最後に沙優が吉田と幸せになると心から望んでいる。(先生!ぜひそうしてください!!!)
この本は本当に面白くて、読みやすくて、私のような外国人でも読める、楽しめると本当にありがとうございました!これからの続きも期待してる!