第2.4話

 その後は、岩みたいに頭が重くなり、思考を停止した。また、暗い洞窟に放り込まれた気分だ。理科の授業の内容が右耳から入って左耳から流れる。

 いつの間にか四時間目が終了していて、もう給食の時間になっていた。

五人班で机を同じ向きになって凸の形に運び、食べた。目の前は大塚だ。

大塚と陽花里以外の三人はぺちゃくちゃ喋りながら食べている。

二人は下を向きながら黙々と箸を進める。


 大塚が口を開いた。

「ねぇ、坂江さん……? 」

「ん? どうしたの 」

「今日、何かあったの……? 」

私は少しイラっとした。気を遣えないのか、コイツ。

「なんでもないよ 」

ぶっきらぼうに答えた。

「そっか……。ぼ、僕でよかったら、いつでも話聞くからね 」

声が少し震えていたけど、大塚君がかっこよく見えた。いや、紳士だ。

「あ、ありがとう! 」

そう伝えると、何故か心が温かくなった。大塚パワーかな。

「どうもいたしまして 」

大塚君は微笑んだ。ヤバい、眩しい。イケメン。

 それから、たわいのない話をして、給食の時間が終わった。

大塚君と話していると、女子の面倒くさいあれこれが、ちっぽけに見えてきて、心が浄化されるみたい。自然でありのままの自分でいられる。それに、大塚君の笑顔がもっとみたい。私はメンクイなのか。



 五時間目の体育は、廊下を全力でダッシュして更衣室へ向かう。

「おい、廊下を走るなぁ!! お前らは小学生か!! 」

担任の野口が怒鳴るが、体育教師が三分以内に整列完了が目標の私たちにとっては、走らないという選択肢はない。野口より、体育教師より説教が長いし、体育の時間が少なくなるのは避けたい。だからみんなは、野口なんぞ無視して更衣室へダッシュする。

「お前らぁ!! 早く着替えろ!! 」

 あぁ……野郎二人うるせぇ……。

お願いだから、ストレスを生徒に八つ当たりしないでくれ……。


 何とか整列完了ができ、体育教師の機嫌がよく、無事体育の授業が終わった。

着替えるのも、共に行動する人もいない。女子更衣室の中の会話は野口の愚痴が飛び交う。特に聖奈と千鶴。二人が大声で言って、その上に他の女子も言う。

「次の授業まであと三分だぞー! 」

体育教師が叫んだ。

「やっば! 」


 六時間目の総合の授業は、進路についてだ。

その前の雑談は廊下で走る意味を反論した内容で、十五分ぐらい永遠と語り続けた。

もちろん誰も聞いてないが。


「お前ら、将来の夢は決まってるか? 高校はなりたい職業に近づける高校を選べよ。例えば、整備士になりたいなら、工業科とか。看護師なら条正西とか、条正東だな。西と東は進学校だから大学進学を考えている人が多いな。ただし、これだけは言える。なんとなく、だけで決めるなよ 」


 頬杖立てて聞いていた陽花里は、ハッとして、真剣に聞き入った。

中学二年生でも、受験はもうすぐ目の前にある。一年後だとしてもあっという間。

将来のことなんて何も決めてないし、ましてや高校のことなんて決まってもない。

 でも、私もいつか高校生になる日がくるのか。新しい制服を着て、新しい友達と一緒に部活したり、放課後スタバでキャラメルフラペチーノを飲んで、スマホで自撮りしてT●itterやI●nstagramに載せてたりして、高校生活をエンジョイするのかな。


「でも、受験で落ちるやつもいるからな。俺が受け持った生徒の中にも落ちた人もいる。そいつらがその後どうしたかは人それぞれだったな。とにかく、受験で落ちて浪人したくなければ今のうちから勉強しろ 」


 野田のその言葉によって、不安と焦りが押し寄せて高校生活の妄想が一気に音を立てて崩れた。このままじゃ、高校に行けない、陽花里はそう確信した。

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少女は考える。 倫華 @Tomo_1025

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