旧校舎の怪③
目が覚めると校長室にありそうなフカフカの高級ソファーに横になった状態だった。
どれくらい気絶してたんだろう。
それより、たしか私は生徒会室の会長席に堂々と座るゾンビを見て入り口付近で気絶したはずだ。
誰が私をソファーに?
あまり見たくないけど、確認すべきだろうか。
もし、まだゾンビがいたらどうしよう。と顔を上げられず、一人思考していると、
私の座っているソファーの向かいから声が聞こえた。
「すまない。悪ふざけが過ぎた。まさか気絶するとは思わなかったよ。」
それは私が部屋の外から呼びかけた時に返ってきた声と同じものだった。
恐る恐る顔をあげ前を向いてみる。
そこにはゾンビ・・・の被り物を持って、少し申し訳なさそうに笑う黒髪の男性がいた。もちろん血色の良い顔だ。・・・イケメンだ。
「な、なんだ被り物・・・。」
普通にハリウッドのホラー映画でも使われてそうなくらいリアルなものだ。
見た目の質感、目や鼻、口から流れ固まった血、一部欠けた皮膚。少し大きいが、これがその辺に落ちていたら”遺体を見つけた”と通報してしまいそうだ。
おふざけにしては本気すぎる。
「さっき君が旧校舎へ入ってくるところが窓から見えたんだ。久々のお客さんに少し張り切っちゃってね。さて、幽霊部にようこそ。僕は2年の
黒山先輩か・・・なんて迷惑な張り切り方する人なんだろう。
それは置いといて、幽霊部・・・?
「あの、私、1年の小倉彩音っていいます。実はまだ入る部活決めてなくて・・・。部活募集の掲示板で幽霊部員募集中って張り紙をみて来たんです。幽霊部ってどういう部活なんですか?」
なにかの部活の幽霊部員と勘違いして来てしまったが、やはり違うみたいだ。
幽霊部とは名前からしてオカルト系の部活なんだろうか。
「・・・掲示板に張り紙が?へぇ、そうかそうか。わざわざ来てくれてありがとう。我が幽霊部は名前の通り、幽霊に関する部活だよ。過去に起こった心霊現象を検証してみたり、今現在起こっているものを調査するというのが一応活動内容かな。部員は僕を入れて4人いるよ。」
意味深な笑みを浮かべながら黒山先輩は本棚からファイルを取り出し、オカルト雑誌の記事を切り抜きやネットの噂話をコピーしたものが貼られたページを見せてくれた。
しばらくオカルト話を楽しそうに話してくれていたが、正直不気味すぎる笑みにドン引きである。さわやかイケメンさんなんだけどなぁ。
それは置いといて、どうやらこの幽霊部も私には合わなさそうだ。
部活入部の期限は明日の放課後までだし、また明日友人に適当な部を紹介でもしてもらおう。
とりあえず、今日は帰ろう。
「でね、この4階の紫おばさんってのが・・・」
「あの!ごめんなさい。私、他の部も見に行く約束してたのでそろそろ失礼しますね!」
この近くの地域にある都市伝説を詳しく解説してくれていた黒山先輩の言葉を遮り、私は立ち上がった。ありもしないウソの約束を理由にしたことはちょっと心が痛むけど、オカルトはあまり興味がないのだ。
「それは残念。ごめんね、長いこと話し込んじゃって。もし、怪奇現象などに興味があるなら是非我が部をよろしくね。」
黒山先輩もその発言とともに椅子から立ち上がり、歩き出すと廊下への扉を開けてくれた。
にっこり笑顔が眩しい・・・。
早く退散しないと罪悪感で押しつぶされそうだ。
「はい、ありがとうございました。では失礼します。」
ガララ ガタン
と音を立てながら廊下を出て扉を締め切ると再び暗い木造の古びた廊下を進む。
・・・あれ?付けたはずの明かりが消えてる。
管理人さんが消したのだろうか?
校舎の入口方面はもう完全に真っ暗だ。
日が落ちたからか、先ほどよりも肌寒く感じる。
出口へと進んでいると自分の足音と木の床が時々軋む音が旧校舎に響く。来たときよりも校舎内は静かで余計に自分が立てる音が響いていて来たときにも感じた再び恐怖心が蘇った。
私ってこんなにもビビりだったんだなぁ。
平常心、平常心。と自分を落ち着かせようと友人たちとしたくだらない会話を思い出しながら歩くが、鼓動と体の震えがおとなしくなることはなかった。
幽霊部員 内藤 樹 @knight777
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