旧校舎の怪②

こんな張り紙昨日は無かったはずだ。

幽霊部員募集ってことは、顔を出すだけで何もしなくてよかったりするんだろうか

まさか、誰かが作った最後まで部活に入部できなかった子への救済処置?


まぁ、なんの部活であっても、とりあえず今の私の状況からは幸運と言うしかない。

どうせ帰らないが帰宅部のようなものだろう。

今から行って、ささっと入部してしまおう。


でも、旧校舎?そういえば、15年くらい前に今の校舎に変わったんだっけ。


私は掲示板の隅のほうに設置されている茶封筒から一枚入部届を取り出すと、学年クラス、名前を書いて現在の校舎の裏手の山の麓にある旧校舎に向かった。


まだ行ったことがないが、生徒手帳に載っている地図を見ると敷地は繋がっていて、すぐ近くにあるようだ。


~桜間高校旧校舎 昇降口前 17:25~


新校舎を出て5分ほど山を登った頃だろうか、雑草や枝が自由に居座る荒れた道の先に木造の建物が現れた。木や地形のせいで下から見えなかったが本当に近くにあったようだ。


さすがは創立75年という長い歴史がある桜間高校の旧校舎と言えるだろうか。その建物は見るからに古く、所々割れた窓ガラスや穴が開いた壁が見える。

15年前からほとんど使われていないということが原因なのだろう。もはや廃墟と呼べるレベルまで劣化していた。


本当にこんなところに人がいるのだろうか?

そんな不安な気持ちにさせるのは建物の見た目もあるのだが、一番の原因は周りの暗さにあった。下にいたときはまだそこそこ明るかったのだが、ここは木の葉のせいか薄暗くジメジメしていた。


指定の場所はたしか1階の生徒会室だったはずだ。軽くのぞいて誰もいなければ帰ってしまおう。内心おびえながら私は校舎の中へと歩みを進めた。


軋む廊下、窓から入り込む僅かな光、左にはトロフィーなどを飾っていたと思われる少し割れたガラスケース、右には真っ暗でまったく上が見えない階段。

入ってすぐにこのシチュエーションだ。これでは完全に肝試しである。


だが、負けず嫌いな私はもはや意地で進んでいった。

職員室という札がかかった部屋を通り過ぎ、L字に曲がった校舎の角を過ぎると奥に明らかに人工物である光が見えた。

・・・なんだ電気通ってんじゃん。


正直ビビッていた私は脱力しながら廊下の端にあるボタンを押し一階校舎に明かりをともした。木造という不気味さは残るが中は埃が溜まっている程度でそこまで荒れていなかったらしい。バカらしい、と一人笑いながらミシミシ音を立てて校舎を進んでいくのだった。


曲がってから30メートルほどでその電気の付いた部屋についた。そこにかかっている札は生徒会室。どうやらここで間違いないらしい。


コンコン  コンコン


「すいませーん。誰かいらっしゃいますかー?」


校舎と同じく木造の扉を軽く叩き、声をかける。

校舎に声が響き一瞬びくっとしてしまったのは内緒だ。


「はい、どうぞ。」


こちらが声をかけてすぐに返ってきた応答、それは男の声だった。

部員だろうか若い声だ。


少し髪を整えたのち、「失礼します」と一言かけて扉を開け入るとそこは校舎の様子からは想像がつかないほどきれいな部屋で内装がしっかりしていた。

赤い絨毯、本でいっぱいの本棚、高級そうなソファーが向かい合って二つ、その間に艶のある綺麗な木製のテーブル。

その奥には校長室にありそうなデスク、そしてクルクルと回りそうな大きな椅子、 そしてその椅子に座るゾンビ顔。







・・・ゾンビ?


「ひっ・・ゾン・・え・・あ・・」


当たり前のようにデスクに肘をつき、手を組みながら椅子に座るゾンビを一瞬流しながらも、我に返った私は軽く悲鳴を上げ腰を抜かし、意識を失った

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