声を売れば小学生をすりすりできる!

ちびまるフォイ

声のドナーを探し続けて!

「あーー小学生をすりすりしたい」


いつもの口癖が出てしまう。

あのすべすべな肌と華奢で小さな愛おしい体つき。

1日1回はこの呪文を唱えるほどに俺はロリコンまっさかりだ。


「そして金がない……。小学校を毎日パトロールしなきゃいけないから仕事にもつけないし……。

 なんかこう、在宅で稼げる仕事はないものか」


ネットで調べてみてもなかなかいい仕事は見つからない。

その中でひときわ異彩を放つ仕事を見つけた。


『あなたの声、売りませんか?』


「なになに……。声を出せなくなるかわりに、お金がもらえます……!?」


こんな楽な仕事があっていいのだろうか。

普段家にひきこもっているので声が出せなくたって支障はない。

最後に話したのはコンビニ店員へ「温めてください」の一言だ。


1週間:10万円

1ヶ月:50万円 ...


声が出せなくなる期間が長いほど料金も高くなる。

最初はお試しということもあって1週間でチャレンジ。


1週間過ぎてもなんら生活に支障がなかった。


(なんだ、ぜんぜん問題ないじゃないか! これで10万円もらえるなんて!)


俺はすぐに1ヶ月パックへと乗り換えた。

こちらもなんら日々の生活になんら問題なかった。


(やっぱり、俺みたいな人間に声なんていらないんだな)


毎日、口癖で小学生をすりすり~とか言うくらいの使い道しかない声。

それが出なくなっても誰も困らない。いい商売を見つけた。


はぶりがよくなったので新作ゲームを買った帰り道だった。


「きゃーー! 誰かそいつを捕まえて!!」


女性のバッグを奪った男がこちらに向かってきた。

不用心にも覆面すらつけていない。顔まる出しだ。


「どけ!!」


泥棒は俺を押しのけて車に飛び乗り走り去った。

ナンバーもしっかり覚えたし、車の特徴も記憶している。


バカめ。俺が警察に連絡すれば瞬殺だ。


『はい、こちら警察です』


「…………」


『あの、なにか? いたずらですか?』


「………! ………!!」


ぶちっ。つーつーつー。


(しまった! まだ1ヶ月パックの期間中だから声が出せない!!)


なんてことだ。俺という完璧な物的証拠がありながらそれを伝えられないなんて。

でも、か弱き女性から泥棒をはたらく男を見過ごすわけにはいかない。


(そうだ! キャンセルすればいい!)


声を売るサイトにアクセスして、すぐに1ヶ月パックのキャンセルを申し出た。


『大変申し訳ございません。期間中の中断はできません』


「………!?」


はああああ!?


『期間が過ぎてから再度ご検討をお願いします』


「……!! ……!!!」


それじゃ遅すぎるんだよ! 犯人が逃げてしまったらどうする!!


……と、声に出したがまるで声にできない。

不平不満すらいえないことが、ここまで不便だなんて。


(いや、待てよ。俺が売った声はいったいどこにいったんだ?)


ふと気が付いた。

俺の声はどこかに売られていると聞いたが、それはどこなんだろう。

販売先さえわかれば俺の声を取り戻せるかもしれない。


声が使えなくてもネットは使える。

持ち前の知識と技術でサイトの販売先を調べると声によってバラバラなのがわかった。

そして、俺の声の販売先は……。


(びょ、病院!?)


なんで病院なんだ。

意味はわからないが販売先の病院、それもいち個人の病室へと向かった。


「やあよくきたね」


病室にいる男は俺の声を使って話していた。

間違いない。この人が俺の声を買ったんだ。


「私は手術で声帯を失ってしまってね、しゃべることができなかった。

 でもこうして声ドナーを受けたことでしゃべれるようになったんだ」


「……!」


そんな身の上話はいい! 俺は犯人を捕まえなきゃ!


俺はスケッチブックで筆談しようとすると、男はそれをとめた。


「大丈夫、君の言いたいことはわかっている。

 君の売った声があるからね」


「……?」


「君が私に売った声、そこには君がしゃべりたいことが入っている。

 つまり、君が言いたいことは、私にも伝わっているのさ」


「!!」


「さぁ、一緒に警察へいこう」


なんて話が早いんだ! 言葉のもつ意思疎通の便利さを思い知った。

警察につくと、男は俺が声を出せない事情を話してくれた。


「というわけで、これから私が話す言葉が、彼の言葉です」


俺はこくこくとうなづいた。

さぁ、これで犯人逮捕確定だ!


そして男は警察に伝えた。





「あーー小学生をすりすりしたい!」


男のひとことで、俺の逮捕が確定した。

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