第7話 GINJI

「とりあえず、待ち合わせは上手くいったみたいだな」

USHIOの声に、俺は頷く。

「でも、やっぱりあの子じゃ、ちょっと若すぎないか?アイツは年上の女にリードしてもらうほうが、合うと思うんだけど」

と、これはNAOTO。

「いや、実はハルカちゃんはRAISUKEより、年上なんだ。確かに若く見えるがな」

「へ~最近のアイドルは、ホントに年齢不詳だねぇ」

USHIOとNAOTOが、感心したように呟いた。


俺はRAISUKEに年相応の恋愛を楽しんでもらいたかった。

そして、ゆくゆくは生涯の伴侶を見つけて…そんな人生を送ってもらいたかった。

もう将太くんは自立目前だ。

将太くんがいなくなった後の人生のほうが、アイツには長いんだ。


「お、移動始めたぞ」

俺はUSHIOとNAOTOを従えて、気づかれないように、2人の後を追った。


「春香ちゃん、何食べたい?」

RAISUKEが何の気なしに尋ねる。

「えっと、RAISUKEさんがよく行くお店がいいな」

「なら、この近くにあるよ」


歩くこと約3分。

辿り着いた先は、庶民の味方のハンバーガーチェーン店マクドナルドだった。


後をつけてきた俺は、他の2人と共に頭を抱えた。

曲がりなりにも、そこそこ顔も名前も売れているアイドルを、ファーストフード店に連れていく事はないだろう。


「着いたよ。春香ちゃん、ハンバーガー好き?」

ハルカは固まっていた。


「どうしたの?春香ちゃん」

RAISUKEは不思議そうな顔をしている。

やっぱりコイツはバカだ。


「信じられない…」

プルプル震えながら、ハルカが呟いた。

「私だって、最近は売れているのよ!マックなんかに入れるわけないじゃない!バカにしてるの!?そんじょそこらの女子高生と一緒にしないで!」

「え?」

RAISUKEに悪気はない。

だが、当然の反応だ。

ハルカはくるりと振り返り、そのまま走り去ってしまった。


と、その時。


信号無視して道路を横断してようとしたハルカに、大型トラックが迫っていた。


「マズイ!」

俺もUSHIOもNAOTOも、飛び出そうとした。

だが、一番先に飛び出したのは、最も近くにいたRAISUKEだった。


「春香ちゃん!」

RAISUKEは、ハルカを突き飛ばした。

そして、自分も逃げようとしたのだろうが、遅かった。


一瞬の出来事だった。

歩道まで突き飛ばされたハルカは、茫然と事故現場を見つめている。

そして、車道には血まみれになったRAISUKEが横たわっていた。

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