【祝!書籍化!】ぼくと私の異世界ヘルパー

ちびまるフォイ

ブランドイメージに踊った人

書籍化と書けば人が集まるんじゃないか。

そう思ってこの小説は投稿された。


『ぼくと私の異世界ヘルパー』


もともと投稿されていた僕の作品は人気が出なかった。

てこ入れしようがお色気入れようが何の意味もなかった。


そこで【書籍化】という文字をタイトルに入れてみた。



★150000



「お、おおおお!? なんかすごい人気だ!?」


自分でもびっくりする人気を手に入れた。

これを読んだ人も『書籍化』という魔法の言葉に引き寄せられたんだろう。


なんだっていい。

僕の作品が読んでもらえるならなんでもいい。

入口がどんな形であったとしても。


評価はどんどん増えていって、レビューも投稿されていった。


>題材がいい!めっちゃ面白い!

>続きが楽しみです!応援してます!


「やれやれ、読者って本当にブランドに弱いんだなぁ」


ランキングや評価数が増えれば自然と人が集まる。

ブランドイメージというのがどこまでもはびこってるのがわかる。


「ま、別に人気が出ればどうでもいいか」



書籍化、ただその3文字だけでここまで好転するとは思わなかった。

数日後、登録しているメールアドレスに連絡が来た。



『書籍化のお知らせ』

このたび、貴殿の小説がオーバーファンタジア文庫で書籍化したいと思っております。

差し支えなければ書籍化してもよろしいでしょうか?



「えええええ!? 本当に来ちゃったよ!?」


嘘が本当になるなんて思ってなかった。

前までは評価どころか読者すらいなかったのに。

編集側すらブランドイメージによって判断してるんだな。


「ふふ、まあ、どんな形であれ僕が評価されたのならいいか」


1か月後、本当に書籍化された。

嬉しさのあまり通帳を見に行くのが楽しみだった。


「……あれ? ぜんぜん増えてない?」


印税ってここまで入らないものなのか。

あわてて自分の小説をネットで検索してみるとネットショップを見る。


「ひっく!! 評価ひくっ!!」


ネットの投稿サイトであれほどに人気だったのに、Amazonではボロクソだった。

本屋さんでも平積みされているだけの作品群に含まれていた。


「なんでだよちくしょおおお!!」


やっと気が付いた。

編集ですらもうなにも判断してないことに。


「ああ……そうか、編集も読者もみんなブランドに踊らされてたんだ。

 いいものを判断する力なんて持ってなかった」


もし、書籍化の文字がなかったらこの小説は読まれなかった。

ランキングに乗らなければ、評価がついてない作品なら書籍化されなかった。


それは結局、周りの意見に流されているだけで"判断"ではなかったんだ。


「どいつもこいつも、自分で考えることを放棄しやがって!!」


イライラしたらお腹が減った。




「よし、グルメサイトで高評価の店にいくか」

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