第7話 おわりに

『ブラックホールシャドーを求めて』 7/7



■前口上 7■


本書は科学書である。


まぁ場違いではある。まことにもって場違いなのだが、

唯一、クリエイティブな内容が共通点かなぁ。

経緯の詳細は後述するとして、状況が状況なので、

最初に勝利条件と敗北条件を挙げておこう。


勝利条件A 1000人程度が読んでくれる

勝利条件B 科学を志す人が出現する

勝利条件C ファンレターが少し来る

敗北条件D まったく反応がない


で、これらの条件が達成されたかどうか、どうやって判定するんだ。。。


という前口上で3月頭からアップをはじめて、ほぼ一月。

さすがというか、条件判定はそこそこできるんだな。

★5

9人のフォロワー

80PV(page view)

世の中、なかなか厳しいというか、

日々、これだけ大量の小説がアップされているとは思いも寄らなかった。

そんな中で読まれるのは、たしかに至難の技かもしれない。


条件ABCDは、もちろん成績の優・良・可・不可のことで、

(実は隠れ判定としてS秀もあったけど、もー、書けない;笑)、

CとDの間ぐらいか、微妙だなぁ、


2017年3月29日

JF


PS:

何というタイミングか、こんなことってあるんだなぁ、十数年を経て、『ブルーマーズ』が創元から4月近刊という情報をいただいた。ちょっとだけ待って翻訳を読むか、せっかくゲットした(通勤途上で読みやすいように6つぐらいにばらした)原書をまずは読み始めるか、嬉しく悩むところだ。


+++

おわりに


 声はすれども姿は見えず、闇夜のカラス。漆黒の宇宙空間に浮かぶ単独のブラックホールも、闇夜のカラスと同様に、本当にブラックホールだけしかなければ、その姿を見ることは難しいでしょう。しかし闇夜のカラスも背後から強烈なライトで照らせば、光の中にそのシルエットを浮かび上がらせるはずです。同じように、いくら光を吸い込むブラックホールといえども、輝く光の中に置かれれば、すべての光を吸い込むことはできずに、光の海を背景に暗黒の姿がシルエットとして現れ出でるのです。

 ここまで、ブラックホールとは何か、宇宙のどこにブラックホールがあるのか、そして、そんなブラックホールはどのように視えるのか、ブラックホールの可視化はどう研究されてきたのかを紹介してきました。










 最後に、今後の研究の動向を予想するためにも、いままでの研究の流れを少しまとめてみましょう。


概年    一般の常識     研究者の常識      先駆者の予想

1970  真っ黒でみえない  真っ黒でみえない    光り輝く(リンデン-ベル)

1990  真っ黒でみえない  光り輝いてみえる    シルエット(ルミネ、福江)

2010  光り輝いてみえる  シャドーが浮かぶ    朧に霞む

2030  シャドーが浮かぶ  朧に霞む        ?(ここを予想したい!)


 一九七〇年ごろは、一般的にも研究者の間でも、ブラックホールは真っ黒でみえないと思われていました。そんな中で、先駆者リンデン-ベルが、クェーサーのモデルとして、光り輝くブラックホールという描像を提案しました(第3章)。一九九〇年ぐらいになると、一般的にはまだブラックホールは真っ黒でみえないというのが常識でしたが、研究者の中には光り輝くブラックホール降着円盤を研究する人も増えました。そして光り輝くドレスに浮かび上がるブラックホールシルエットが描かれました(第4章)。さらに二〇一〇年あたりには、一般的にも光り輝くブラックホール発見の報が頻繁になされるようになり、研究者の間でもシャドーの研究が進みました。そして研究者の間では、シルエットやシャドーは、もしかしたら、朧に霞むのではないかとの危惧も出てきました(第5章、第6章)。

 こうしてみると、だいたい二〇年ごとぐらいに、ブラックホールの描像と可視化への理解の階梯を登っているようです。

 では、少し先、二〇三〇年ごろの予想をしてみましょう。

 そのころは、一般的には、光り輝くブラックホールのシルエットやシャドーはブラックホールの常識となっているかなと思います。一方、研究者の間ではシルエットやシャドーは朧に霞んでみえないんじゃないかと思われており、おそらくは、電波観測でもいまだに見えていない可能性もあります。では、その時代は向けて、何を先駆けるか! ここが思案のしどころですね。


 ぼく自身は、四半世紀以上にわたり、この「ブラックホールシルエット」で小文など書いてきて、とうとうは本書にまで来たわけですが、表向きには見える見えるといいつつ、実際には、こんなに綺麗には見えないよな、と思っていたりします。朧に霞むわけですね。

 その兆しは、分厚いブラックホール風を吹き出す超臨界降着円盤にみられます。降着円盤は、そもそも周辺からガスが降ってこないと存在できないので、超臨界降着円盤に限らず、標準降着円盤の周辺でも、希薄なガスや雲などが浮かんでいるでしょう。落ちてくるガス雲もあれば、風として吹き出している雲もあり、ブラックホールを周回している雲もあるでしょう。地球でも晴れた日ばかりではありません。曇りの日もあれば、雨の日も雪の日もあります。降着円盤上空が晴天という保証はないのです。このことを、ぼく自身は、降着円盤の“環境問題”あるいは“お天気問題”と考えています。

 では、朧に霞むブラックホールを視るには、どうすればよいのでしょうか。

 まず、晴れた日を狙う方法があります。X線連星の降着円盤は、スペクトルの観測から標準降着円盤が非常に合うものも多いので、おそらくは晴れているものが多いでしょう。周辺がクリアなX線連星の降着円盤なら、ブラックホールシルエットは写るはずですが、ただし、見かけが非常に小さいのが難点です。

 また、曇っていても薄曇りであれば太陽の形がわかるように、ブラックホール降着円盤周辺の希薄なガスを通した姿を観測する方法もあります。数年前には、希薄なガスを通して朧に滲んだブラックホール降着円盤の姿を可視化したこともあります(Fukue 2013a, b)。ちなみに、この研究、最初は日本の学術雑誌に投稿したのですが、受けが悪くてリジェクトされてしまいました。相変わらず頭の固い人が多いんでしょうか。仕方がないので、イギリスの王立天文学会誌へ投稿し直したら、レフリーからは面白がられて、掲載されました。あちらは相変わらず褒め上手ですね。閑話休題。

 最後に、完全な曇天や雨天さらには雪の日でさえ、隙間から漏れる光や全体の明るさから、太陽が出ているかどうかわかるように、ブラックホールが厚い雲に覆われていてさえ、漏れ出る光から、ブラックホール降着円盤の存在を推定することは可能でしょう。光のスペクトルが得られれば、より詳しい情報となります。

 何はともあれ、“天体は見た目が10割”です。見えない天体ブラックホールを視るための研究は今後も続くでしょうし、続けていきたいものですね。


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ブラックホールシャドーを求めて 天文楽者JF @junfukue

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