苦しみからの解放


大雨が降る日。

その日俺はイライラしていた。

というのも昨晩仕事を終わらせいつものように帰路に着こうとした時、上司から書類修正の連絡が入った為帰りが遅くなり、まともに睡眠ができなかった。

無論夢を見ることも日記をつけることもできなかった。

次の日の朝。昨晩は眠れなかった為体が重く体調が悪かったから会社を休もうとしたが却下されたからイライラしている。

嫌々会社に行くことにした俺はあることを決めた。

「そうだ・・・夢の中であの嫌な上司殺してやろう」

そう思った瞬間ぞくぞくとした興奮が沸いてきた。

嫌な上司から怒号が飛んできても我慢できたし、むしろ嫌な仕事が楽しくて仕方が無

かった。

嫌な時間はあっという間に終わり終業の時間がやってきた。

るんるん気分で家に帰り、布団に潜り夢を見る。

その日はこんな夢を見た。

俺は知りもしない上司の家の前にいた。

鍵はかかっているが夢の中なので安易に開けて部屋に忍び込み、上司の寝ている部屋までやってきた。

「こいつ・・・気持ちよさそうに寝やがって・・・」

いつも人に文句だけ言うだけ言う上司への憎悪を溜め込んだ俺を誰も止めることは出来ない。

懐から出したナイフで何度も刺した。

気が済むまで刺して最後にこう言った。

「ざまあみろ」

そう言って目が覚めた俺はさっそく夢日記をつけて再び寝ることにした。

次の日の会社はとても気分が良かった。

夢見が素晴らしかったからである。

それはまるで色の無い世界に色が着いたような気分だった。

嫌な上司から怒鳴られても平気だったし、夢の素晴らしさを再確認した良い日であった。

こんな毎日が続けば良いとさえ思った。

しかしそれも長く続かなかった。

ある休みの日、つけた夢日記を読み返そうと思い手に取った。

この数ヶ月夢という夢を全て日記に記した。

どんな夢を見たか気になり、日記を一気読みしようと日記帳を開いた。

ご飯を食べた夢、高校の時の夢、同僚と仲良くする夢・・・さまざまな夢を見てきた。

中でも人を殺す夢は何度読み返してもぞくぞくする感覚は消えなかった。

日記を読み終える頃には日は暮れて夜になっていた。

俺は夢にどっぷり浸かっていっていることにすでに気づいていなかった。

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ある男の夢日記 χおそばχ @ymk_neko

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