3章第3話 リスタート
あれから三日後のお昼過ぎ。
「あ、佐藤さん」
「あ、谷本さん」
私達は、家電量販店で偶然再会した。
カメラのグッズが置いてあるコーナーで再会というのも、私達らしいのかもしれない。
「会えて良かった。
この後、時間あるかい?」
「はい」
「ちょっと付き合ってくれ」
谷本さんと一緒に歩いて辿り着いた場所は、こないだ花火大会があり、谷本さんと花火をした、あの河原だった。
「あの日、次の約束しないまま別れちゃっただろ?
君の連絡先を聞いてなかったからどうしようかと」
「そういえば、教えていませんでした」
「実はさ、昨日京子の両親に会ってきたんだよ。
京子が死んだ後、何故か俺に謝ってきたのを思い出して聞いてきたんだ」
私はかける言葉が見つからず、黙って聞いていた。
「京子、最近になって大きな病気が見つかって、余命3ヶ月だったらしい。
それを隠してたことを謝ってたんだってさ。
だから、京子はあんなこと言ったんだろうなってわかってスッキリした」
「谷本さんがスッキリしたなら良かったです」
私にはこれくらいしか言えそうになかった。
「でさ、俺なりのケジメつけてきたら、君に会いたくなってさ」
「はい?」
この展開は正直予想していなかったのでびっくりした。
「もう一回、趣味友達になってくれないか?
写真とカメラが好きなやつ、俺の周りにあんまりいないんだよ」
「わ、私で良ければ……って、私、はじめから谷本さんのことは趣味友達だって思ってて……」
谷本さんが言う、言葉の意味がよくわからなくて困惑してしまう。
「あー、えっと……改めてというか、俺なりのケジメだから、深く考えなくていいよ」
「は、はぁ……」
「ああ、そうだ。
下の名前で呼んでもいい?
せっかく趣味友達なのに、これからもずっと苗字なのは他人行儀だなぁって思うからさ」
「あ、はい」
「ああ、それと忘れない内に連絡先も教えてくれよ。メッセージアプリ、使ってる?」
「は、はい」
なんだ、この急展開。
私は、メッセージアプリのIDを交換している間、急展開に理解が追いついていかず、困惑していた。
「俺が佐藤さんのことも下の名前で呼ぶんだから、佐藤さんも俺のことも下の名前で呼んでよ。
これからよろしくね、愛ちゃん」
「あ、は、はい。
圭介さん、こちらこそ、よろしくお願いします」
圭介さんがスッキリとしたのはいいことだけど、急展開すぎて頭の整理が……。
でも、圭介さんが楽しそうならいいかなぁ。
初めて見る圭介さんの明るい笑顔に、私は少しだけドキドキした。
今も圭介さんの心の中には京子さんがいる。
それが妬ましいと思うけど、それ以上に京子さんが羨ましい。
身勝手ながら、京子さんと同じように、
私も圭介さんの隣で並んでずっと胸を張って歩いて一緒に生きていきたい。
そう思ったけど、私は気づかないフリをした。
リスタート 弓月キリ @yudukikiri
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