三月うさぎ

RAY

三月うさぎ

 

 うさぎはニンジン大好物 ニンジンあればぴょんぴょんぴょん

 自然と顔もほころんで えびす顔でぴょんぴょんぴょん


 という名のニンジンで いつも元気にぴょんぴょんぴょん

 辛いことがあったって キミがいればぴょんぴょんぴょん


 キミと過ごした三年間 楽しかった三年間

 あっという間の三年間 今日で終わりの三年間


 卒業証書の筒二つ 頭にあてて うさぎ耳

 卒業式後の教室も いつものジョークで笑い取り


 伝えたかったことがある けれど 言葉にできないの

 言葉にすると壊れそう だから 言葉にできないの


 気持ちの代わりにぴょんぴょんぴょん

 言葉の代わりにぴょんぴょんぴょん


 キミは「じゃあな」と手を振った

 うさぎも「じゃあね」と振り返す

 

 キミが消えた教室に 一人残った三月うさぎ

 独りぼっちは慣れっ子だから いつものようにぴょんぴょんぴょん

 

 だけど どこか勝手が違う 跳ねた瞬間 涙がぽろり


 一粒 二粒 三粒 四粒

 どんどんどんどん増えていく 跳ねても跳ねても止まらない


 赤い目をした三月うさぎ うさぎだからあたり前


 いつも両目が赤い理由? 泣いてばかりいるからよ

 泣いてばかりいる理由? いつも何かを失くすから


 三月うさぎが失くしたもの それは大事な宝物

 失くして初めてわかるもの 大事な大事な宝物


「忘れ物、忘れ物」


 三月うさぎの後ろから 不意に誰かの声がする

 振り向かなくても誰だかわかる 胸の高鳴り止まらない


「目が真っ赤。うさぎみたい」


 うさぎは焦って下を向く 早く涙を止めないと

 けれど それは車と同じ 涙は急に止まらない


「うさぎ、寂しくなると死んじゃうんだぜ」


 キミの右手が伸びてくる 

 差し出されたのはハンカチと破り取られたノートのページ


 白いハンカチ目にあてて うさぎはそっとそれを見る

 そこにはキミの新たな住所 それから 短いメッセージ


『お前が寂しくならないようにがんばるから』


 何度も何度も読んでみる 穴が開くほど読んでみる

 真っ赤になった目見開いて ビックリ顔でキミを見る


「バカ。そんなにマジに読んでどうする」


 バカと言われた三月うさぎ 「ホントにそうね」とぴょんぴょんぴょん

 初めてキミの目の前で 「大好きだから」とぴょんぴょんぴょん


 赤い目をした三月うさぎ うさぎだからあたり前


 いつも両目が赤い理由? ジッとキミを見てきたから

 ジッとキミを見てきた理由? 瞳に焼き付けたかったから


 突然キミは真剣マジな顔 三月うさぎに急接近

 うさぎは赤い目見開いて 首を傾げてキミを見る

 

「バカ。目を閉じろ」


 キミの様子がいつもと違う うさぎは慌てて目をつむ

 いろんなことがぴょんぴょんぴょん 頭に浮かんでぴょんぴょんぴょん


 うさぎ うさぎ なに見て跳ねる

 幸せな瞬間こんなときを 夢見て跳ねる



 RAY

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

三月うさぎ RAY @MIDNIGHT_RAY

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説