最終話



◇陸奥市役所





前市長の土方は前島ことKINGの真の計画については知らなかったが、陸奥市と”999(スリーナイン)”の癒着には絡んでいたとされ、陸奥市民を裏切った形となった。


そして陸奥市は新たな市長を迎えていた。




『私は、市長の近くにいながら癒着に気づことが出来ませんでした・・そして今、陸奥市は陸奥市民から信頼を失っています』


新市長は広報を担当していた安藤が当選した。



『しかし、これからはすべてをオープンにして市民の信頼の回復に全力を尽くします、ですので職員のみなさんもこれから大変な日々が待っているかもしれませんが、どうか協力のほどお願いします』


安藤は職員の前で深々く頭を下げた。


宗介はその安藤の決意を噛み締めて見ていた。





◇楠木家





『えー!!!鳥飼さん もう帰っちゃうの・・・』和美はすこしガッカリしていた。




『あの人は忙しい人なんだよ』宗介はスーツをハンガーに掛けながら言った。


『でも、テレビでは観たことあったけど・・実物はかなりのイケメンよね』愛美も参戦する。


『かず姉、あれからずっと上の空よ』清美がつっこむ。


『うるさいわねー』



和美は夕食を用意しながら『ほら、さっさと食べなさい』


『え! かず姉、まさか・・・』


『わー!わー!うるさいわよ!』和美は頬を赤くして怒鳴った。



『宗ちゃん、鈍感ね あからさまじゃない』愛美が宗介の脇腹を肘でこつきながら囁いた。


宗介は満面の笑みを浮かべていた。



『宗ちゃんがそんなに笑顔見せるの久しぶりね』和美がつぶやいた。



『ほんと! ほら!ほら!』と清美と愛美が宗介の体をこそばした。


『やめろって!きよ姉!まな姉!』




楠木家は笑顔で満ちていた。






◇M留置場





スティンガーは薄暗い独房で過ごしていた。



ガザ!ドン!『うわ!・・』遠くで怒号が聞こえる。


誰かが向かってくる気配を感じたスティンガーは少し身構えた。


やがて鉄格子前で止まるとスティンガーの方に振り向いた。


黒いスーツ姿で紳士用の帽子を目深く被った男が目の間に現れた。


『何者だ』


『”バベル”は新たな秩序を構築するために戦いを仕掛ける 君が協力してくれるなら、ここから出してやろう』


『興味ないな』


『我々の敵側には”ナイトイーグル”もいる』


スティンガーの動きが止まった。


『このまま、こんなところで埋もれて死ぬのか?』


『オレの興味はナイトイーグルだけだ』


『決着の場を設けてやる』


『ハッキリ言っておくが、オレはあんたらの計画には全く興味がない・・・がナイトイーグルと戦えればそれでいい』





『いいだろう、契約成立だ』男はそう言うと鉄格子の扉を開けた。







◇陸奥市内のとある公園






滝沢瑞穂は公園のベンチに腰掛けていた。


瑞穂の右頬に冷たい感触が起きた。



『よ! どうした浮かない顔して』野上優作が缶コーヒーを持って現れた。


『私たち・・なんのために頑張ってきたのよ・・』


『なんだよ、それ』


『結局、市が裏で犯罪に染まってたって・・』


『それで諦めるのか?』


『どういうこと?』


野上はスマホの画面を瑞穂に見せた。


そこにはM県警玄関に体を縛られた数人の男が写っていた。


『クスリの売人だ』


『これがなんなの?』


『ナイトイーグルだ』


『え?』


『ナイトイーグルが捕まえた奴らだ』


野上はスマホをスーツの内ポケットにしまうと『あいつは陸奥の犯罪とまだ戦う気だぞ、お前はどうする』



滝沢瑞穂は目線の奥で遊具で遊ぶ子供たちを見つめていた。




『やるわよ、諦めないわ』






◇メトロポリタンテレビ





ニュース・アルファが放送されていた。



『陸奥市は裏で”999(スリーナイン)”と癒着していたとされ、死亡した土方元市長、前島副市長もそれに関わっていたとされています』


キャスターの斉藤良子は陸奥市の真実を伝えていた。


『それでも陸奥にはナイトイーグルがいます、彼は今後も陸奥に蔓延る犯罪と戦っていくことになるでしょう』


斉藤はここから自分の言葉で話を続けた。


『ナイトイーグルは自らの命をかけて陸奥市の為に犯罪と戦っています それは九十九に現れたクロウと同じです、それは決して正しい行いではないかもしれませんが、彼らの存在は新たな犯罪の抑止力になっていることも事実です ナイトイーグルは陸奥に現れたヒーローだと私は個人的に思っています』









生放送を終えた斉藤はメトロポリタンテレビの屋上にいた。



【助かった】クロウスーツを身に纏った楓が立っていた。


楓はビジランテとしてのナイトイーグルの賛否について斉藤にメディアを通して発してもらおうと頼んでいた。



『ホンネよ』



【”新たな犯罪の抑止力”・・・か】



『・・・ただもう一つ、別の意味もある、”新たな犯罪を引き寄せる”・・』


楓は無言で佇む。


『クロウやナイトイーグルのような存在が現れたら、同じような犯罪者もまた・・誕生する』



斉藤は屋上の扉の方へと向かいながら『それでも、今はあなた達が必要よ』



そう言うと斉藤は屋上を後にした。







◇陸奥市内 夜






男は息を切らせながら辺りをキョロキョロしていた。



グサ!


男の足に激痛が走った。


『クソ!!』


男は足を引きずりながら逃げ出してた。



しかしその目の前に、すでにナイトイーグルが立っていた。



『・・・陸奥から犯罪は消えないぞ・・根強く蔓延った陸奥の闇はそんな簡単には消えない・・』


真新しいダークグリーンのフード付きのスーツと弓矢をもったナイトイーグルは男を捕まえると縛り上げていた。




【犯罪が無くなるまで、戦う】



宗介はは男の縛り上げが終わると月明かりをバックに立ち上がると。






オレナイトイーグルがいる限り】








THE END













ZACK施設内の一室に2人の男がいた。



『本当か・・』


『はい、”クワトロ”反応を検知しました』


『場所は?』


『オーストラリアのDシティです』


男はタブレットを見せた。


そこには画面いっぱいに世界地図が映し出されており、その一箇所が点滅してた。


『やっと、見つかったな』男は少し安堵の表情を見せたがすぐに引き締めて、もう一人の男に指示を出した。





『佐渡長官に緊急連絡だ、久能秀隆(くのう ひでたか)が見つかった』





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