第44話







目の前に瓦礫の山がある。


それは宗介たちの行く手を阻んでいた。



【タイマーがまだ作動中です・・】


楓は持っていたこん棒で瓦礫の壁を叩く。



数回叩くと少しだけ瓦礫が崩れた。


隙間から垣間見えた奥の景色には爆弾とレベッカウィルスが確認できた。


ブラックカイトが額に上げていたゴーグルを目に位置に合わせた。



『3分よ・・タイマーは3分を切ってるわ』


【瓦礫を砕いていたら、間に合わない】楓はそう言うと宗介の方に振り向いた。



【宗介、矢を放て】


【いや・・でも、ここからでは隙間の狭くて・・距離もあります・・】


【時間がない、お前の矢が最後の希望だ】



【・・・・無理です・・】



楓は下を向く宗介の肩に手を置いて口を開く。




【街を救え】



『時間がないよわ』ブラックカイトがゴーグルのスコープ越しに畳み掛けた。




宗介は僅かに見える瓦礫の隙間を正面にして弓矢を構えた。


その指先は小刻みに震えていた。



その時、父親の言葉がふと蘇ってきた。



”弓は力で引くんじゃない 心を落ち着かせて精神を統一して引くんだ”



宗介は一度大きく深呼吸するともう一度弓矢を構え直した。



ゆっくり矢を引いた。



そして放つ。






矢は僅かな瓦礫の隙間を通り抜け、勢いを保ったまま 正面にある爆弾を突き刺した。




1:03・・02・・・01・・・00・・・59・・・・・




『止まったわ』ブラックカイトがゴーグル越しに確認した。





『レベッカウィルスも無事よ』













ナイトイーグルたちによって、レベッカウィルスが陸奥市に拡散されることはなかった。



住民の避難が解除され、街に活気が戻りつつあったが、それと同時に陸奥市民は陸奥の真実を知ることとなるのであった。





◇陸奥市内:ホテルの一室




『”バベル”・・・?』佐渡がつぶやいた。



『はい、KINGは”バベル”という組織の一員だったようです』宗介が答える。


『わかった、調べておこう』


『どちらにしても、”バベル”は僕たちにとって脅威になる存在だな』楓が陸奥の街並みを窓越しで見つめながら話した。



部屋の扉が開き、ジーンズとジャケット姿のブラックカイトが入ってきた。


『レベッカウィルスは無事にZACKに持ち帰ったわよ』


『ご苦労、貴美子』


『それじゃあ、我々はZACKに戻る準備をするが 楓、君はどうする』佐渡が問いかける。





『僕も帰りますよ、九十九もまだ犯罪で溢れている』






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る