第6話
#6 アオハル部本格始動!?
俺は高校生活というものにどこか期待をしていたのかもしれない。
高校生活というものは長いようで実は短いものだと俺は考えている。なぜなら、やるべき事がある人などはそれに打ち込むからである。
かくいう俺もそういう人種のはずだ。
だが、俺の期待していた高校生活とは、違ったのかもしれない。
ーだけど、それはまだわからないから。と俺は考えている。
「んぅ……」
あまり上がらない瞼を擦りつつ俺は洗面台へと向かう。
いつもならば俺の幼なじみ、海城明里が起こしにくるのだが、今日は明里が起こしに来るよりも早く起きてしまったのである。
ーまぁ、いつも起こしてもらったり、飯作って貰ったりと世話かけてばっかだしな
今日は俺が朝食を作ろうか、そう考えながら洗面台のあるバスルームのドアノブを俺は回す。
「えっ?」
ドアを開けた先に広がる景色はとても美しいものだった。
スラリと伸びた長い足、柔らかそうに見える丸みをおびたお尻、キュッと引き締まった腰のくびれ、自己主張の強い胸、そして、明里の紅潮した顔がーー
「なんでそんなにジロジロ見るの!」
「っわわ!!明里?!なんでいるんだよ!?」
「そんな事より早く出てって!」
明里に言われ、慌ててバスルームから出る。
「わ、悪い」
ドア越しに聞こえる衣擦れの音が聞こえながらも俺は明里へ謝罪する。
「ゆうくんのえっち」
トゲのある声で明里は俺にそう言う。
「そ、そもそもなんで明里が俺の家でシャワー浴びてるんだよ?」
「あっ、さては昨日私がLaNEしたの見てないんでしょ?」
「LaNE?来てたか?」
言われて俺はスマホを確認する。そこには、「明日起こす前にシャワー借りていい?ちょっとうちのシャワー壊れちゃってて……」という明里からのLaNEが来ていた。
「すまない……来ていた」
「もうっ、ちゃんと確認してよ!」
「本当に悪かったって。 今回は確認してなかった俺が全面的に悪い。 本当にすまなかった」
「分かればいいんだけどさ?でも、見ちゃったわけでしょ?」
明里の問いに俺は頷く。
「じゃ、じゃあさ……感想とか、ないの?」
「か、感想?」
ー裸を見た感想?見た瞬間はいっきに浮かび上がったが……ここは素直になった方が失礼じゃないよな?
「明里」
「う、うん」
「お前、もしかして胸大きくなってないか?」
「えっ、えぇぇ!?」
「いや、なんかいつもより大きく見えたからさ。 付けるものを付けてないからか?」
そう言っている途中で、ドア越しでも明里から放たれている殺意とも言えるオーラに気付く。
そして、明里が勢い良くドアを開け、右手を大きく振りかぶりーー
「デリカシーがないよね、さっきのは」
「悪かったって」
俺はまだ頰にビリビリとしたものを感じつつも朝食の用意をしていた。
「だけど、感想だから思った事相手に言わないと失礼じゃないか?」
「だからってあんな事言うのはないと思うよ?」
ー思った事言ったらダメなのか?まぁ、言われてみればデリカシーがないような気もしないでもないが……。
だが、俺は頭に焼き付いたあの光景のおかげで朝から頭が冴え切っていたのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
高校生活に期待と言えば、大半の人が恋愛などと答えるだろう。
だけど、俺はその大半ではないのかもしれない。
俺は恋愛というものがよくわからない。人が人を好きになるということはわからないでもない。だけど俺は、自分の気持ちを疑ってしまうのだ。それ故に、俺はどこか人を好きになれずにいた。
要するに、俺のしていた高校生活への期待とは、今の俺の考え方などを変える事である。
自分を変えるには自分が動かなければいけない。だけど、きっかけが俺は欲しい。変わる事が出来るきっかけが。
「そのきっかけかもしれないのが、目の前にあるんだがな……」
俺は「アオハル部」と書かれた表札を見てそう呟く。
「アオハル部」とは、先日新しく出来た部の名前である。このアオハル部こそが櫻川さんの望んでいた事を達成させようとする場所である。
「苦労したもんな、この部の為に」
「そうですね」
後ろから聞こえて来た声に振り返ると、櫻川さんが立っていた。
「ごめんね、私のワガママで」
「気にしなくていいって。 嫌だったら協力なんて最初からしてないって」
そんな話をしていると残りの二人が部室へと入ってくる。
「なんか、感動だね〜」
「素敵ですね、こういうのって」
部室に入るなり部が出来たことに対しての感動を口にする明里と、櫻川さんの願いを聞いたからか、この部に何かを期待している様子の白鵜先輩。
ーまぁ、他の部と違ってやる事とか明確に決まってないし、それを自分達で決めていくっていうのは確かにわくわくするかもな。
「それじゃあ、何をしていくか具体的に決めておいた方が良いんじゃないかな?」
約一ヶ月前に櫻川さんに屋上へ呼び出された時、俺と櫻川さんが出会った日。
あの時櫻川さんは「恋がしてみたいから」という理由で部を作りたいと言っていた。だから、櫻川さん自身が何かを提案してくれるとやりやすかったのだが……。
「ご、ごめんなさい!わ、私もよくわからないんです」
アオハル部本格始動、といくはずだったが、この日は何をするかという話で終わってしまった。明里や白鵜先輩も案らしきものは出していたが、それも採用ならず。
「初日から驚きのスタートだね」
「ご、ごめんね?藍島くん」
「まぁ、気にしなくていいさ。 俺もあんまり恋愛はわからないからさ」
先に明里と白鵜先輩が帰った後の部室。戸締まりをして帰ろうと思ったら「私がやります!」と言って来た櫻川さんと部室の鍵の取り合い取り合い。
最終的に勝った俺が戸締まりをする事になったのだ。
櫻川さんは終わるまで待っていると言ってくれたので、今は少し雑談をしていたのだ。
しんと静まり帰っている校内。
「藍島くん……私のお願いを聞いてくれる、かな?」
校内の静寂を切り裂くように、櫻川さんは俺に言う。
「何かな?」
「私ね、恋愛がしてみたいから部を作りたいって言ったんだけど、何するかわかってなくて」
櫻川さんは少し頰を染めて言う。
「だからね、今度の土曜日私とどこかにで、出かけない?」
ーえ?これってつまり……。
櫻川さんからの突然のお願い。それはいわゆる「デート」のお誘いだったのだ。
ワガママスクールデイズ さらだいも @saladaimo2014
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ワガママスクールデイズの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます