六月の花嫁

 梅雨の時期には珍しい青天の日曜日。

 晴れやかな祝いの席で、浮かない顔をした友人がいた。


「どうしたの?」

「ジューンブライドってあるでしょ」


 彼女は私を無視して話し始めたが、私は黙って聞いてあげた。


「六月に結婚式をあげると幸せになるって言うけど、日本の女神は嫉妬深いから駄目なんだって。だから日本の六月は雨が多いんだって」


 それは嘘だ。

 ジューンブライドが日本で広まったのは歴史的には最近のことのはず。

 辻褄が合わないけれど、どうせ最初から迷信なので黙っていた。


「私が女神なら今日は雨にしたのに」


 そのとき教会の鐘が鳴ったから、他の人にはきっと聞こえなかった。

 彼女は私と同じ新婦側の参列者で新郎とは面識がない。

 私にはなにも言えなかった。

 学生時代からずっと、彼女達は親友なんだと思っていた。


「あの子には内緒にしてね」


 私の数少ない友人は、そこでようやくにこりと笑った。


(綺麗すぎて見ていられない)

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誰かにとっての一大事 葛瀬 秋奈 @4696cat

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