レール 

がたたーん...


がたたーん...


電車に揺られて

私は窓の外を眺めている


通学路をひとりで歩く学生


犬を連れて散歩するおじさん


宅配の途中のピザ屋さん


ランドセルの肩掛けを握って歩く子


自転車を漕ぐ女の人


畑を耕すお爺さん


ショベルカーを動かすお兄さん


信号待ちをする車


遮断機の前で待つ人


色んな人

色んな生活

いくつもの姿がいくつも通り過ぎていく

私にとっては過ぎ去る景色


でもふと考えてみる

逆の視点になってみたらどうだろう

連なる箱の中に数え切れない人が閉じ込められて

レールの上を運ばれていく

箱と一緒に私も過ぎ去っていく

それを見送って

遮断機が上がるとあの人は自分の一日をまた歩き出す


私が見ていたことは知っているだろうか

私がこうして想いを馳せてみたことは想像しただろうか


もしかしたら

あの人も同じことを考えたかもしれない


 “自分は過ぎ去る箱を人の詰まった背景のように見送ったけれど

 もしかしたら箱の中から誰かが自分を見下ろしていて

 色々想いながら運ばれていったんじゃないだろうか...”


そんな風に

私を想像していたらどんなに素敵だろう


みんな色々想いながら生きている

畑を耕す汗も

ランドセルを握る帰り道も

何一つ背景なんかじゃない

色々なことを考えながら一日を歩いている

何度同じレールの上を走っても

同じ世界なんてたった一度もないんだね


 

揺られながら

沈む夕陽を見つめる

単調な振動と

単調な音を聴きながら

少し世界が愛しくなったら

今日はゆっくり寝て

明日また会いにこよう


がたたーん...


がたたーん...

 

 

 

 

 

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想戯紙 仙花 @senka

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