屑油拾い
バーデル国と隣国との国境近く。数日前の戦が残したモノは多い。多くの死、燃やされた草木、破壊された重油騎兵。……残したものというよりは失ったものか。
しかし、それを望むものもいる。屑油拾いたちだ。彼らは石油が燃え尽きた頃合いを見計らって戦場の残骸を拾い、それを売り、あるいは使って、生きている。
「うひょー!見ろよ!ぶっ壊れてねえ油圧ハサミだ!」
サングラスの少年が、砂の中から対重油騎兵用の関節切断装置を発掘した。闇市に流せばその道の兵士がそれなりの値で買うだろう。
「それこっちにもってこい。ちょうどいい。こいつを切る」
ターバンの少年が重油騎兵の腕部を掘り当てた。このまま全てを運ぶことはできない。使えそうな部分だけを切り出す算段だ。
「おいおいまてまて。大物かもしれねーだろ」
サングラスが周りを見渡す。同業者の姿は遠くにしか見えない。
「とりあえずほってみようぜ」
「二人だけでか?」
「二人だけでだ。もし大物だったら全部俺たちのモンになるからな」
ターバンとサングラスは油の染みた重い砂を掘り起こす。火が消えているとはいえ、深くまで染み込んだ石油は燃えない。激しい重労働だ。
しばらく掘ったがすべては見えない。
「おかしいな。大きすぎるし、きれいすぎる」
「ああ、こんな上物、捨ててくわけがねえ」
その重油騎兵は戦場に捨てられたとは思えないくらいきれいで、傷も少ない。まるで、最初から埋められていたような。
更にしばらく堀り進めると、操縦席の蓋にたどり着いた。こじ開けられた痕跡はない。数日前の戦のものならば、まだ中に人がいるかもしれない。
が、叩いても反応はない。
「どうする、開けるか?」
「やっちまおう。重油騎兵を助けたとなりゃ褒美モンだ」
サングラスは迷いがない。
解体用油圧ジャッキ(ジャンクパーツを組み合わせた手製のもの)で操縦席をこじ開ける。そこには、1体のミイラがいた。
ガベッジ・オブ・オイルパンク デバスズメ @debasuzume
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