あたたかな食事
Ⅰ
朝だ、と考えると次には起きなくては、と思考する。備え付けのベッドから起き上がると、すぐにシンクへ向かった。陶器のコップから歯ブラシを取り出し、自分の姿が映るわけでもない磨りガラスを注視して歯を磨く。蛇口から水をひねり出し、コップに注ぎ、口に含んだ水と溜まった粘液を吐き出す。それから洗顔をする。近くに一昨日替えておいたタオルがあるのでそれで顔を拭くと、幾分スッキリした感覚を得る。ひんやりとした空気を顔に感じ、冬を迎えたことを改めて、しかし特に感慨に浸るわけでもなく実感する。
彼の住むワンルームは彼よりも早起きな電気ストーブで、ある程度暖められていた。コンロに置きっぱなしのミルクパンに水を入れて温め始める。昨日プラスチック容器に移しておいたごはんをレンジで温め始める。2つが済んだら少しの時間的余裕が生まれたので、部屋のほぼ中央に位するテーブルからリモコンを取ってテレビを点けた。天気予報では晴れが一日中続くものの、冷え込むことになるらしい。レンジのアラームが鳴ったので、すぐに容器を取り出しに行く。 ごはんの次には冷蔵庫に入れておいたスーパーの惣菜を温め始める。パンの中の様子を少しのぞいてみるが、やはりまだ沸騰していない。さあCMのあとは今話題のアイドルグループがスタジオに……という音声を流しながらカップスープの素をお椀に入れて、再びパンの様子をぼんやり眺めることにした。
今年の4月から続けている、ルーティンワーク。特に何も考えずに過ぎ去るいつもの時間。
時々冷たさを覚える、いつもの時間だ。
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