ユーモアとシリアスのあいだで

西森修

夢の中で

 君ときたら夢にまで出てくるから始末に負えない。そのうえ犬になってるんだから混沌としている。

 クリクリの目をしてじっとこっちを見ている。カメラが耳にズームすると、髪をかきあげる時にちらりと光るピアスのついたそれに似ているように思えてくる。髪はといえばきれいに手入れが行き届いている感じが上手く出ている。4本の短い足で立って、こっちを見つめる以外、普段と変わりないような気さえしてくる。

 何も喋らない。しっかりと話したことがないからだ。どんな鳴き声なのか、容姿からある程度予想できるが、現実的には違う声質だと思う。

 話しかけてみよう。夢なんだし。臆病でいる必要なんてないんだ。夢なんだから。

 決心した瞬間、目が覚めると分かっていても。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る