せるりあんの大冒険【ガイド付き】

ぼく、せるりあん

　はじめまして。

　ぼくは せるりあん。

　体（からだ）はあおいろ。大（おお）きな 一（ひと）つ目（め）が トレードマーク（とれーどまぁく）なんだ。

　せるりあんは フレンズ（ふれんず）の サンドスター（さんどすたぁ）っていう きらきらを 食（た）べて生（い）きてるんだ。こわい 生（い）き物（もの）と言（い）われているよ。

　けど、ぼくは ちょっと ちがうみたい。

　だって、ぼくは フレンズ（ふれんず）を 食（た）べないからね。

　ぼくは きっと とくべつなんだ。

　ぼくには この"かがやき"が あるから。

　きょうは じゃんぐるちほーに やって来（き）た。

　ぼくはジャパリパーク（じゃぱりぱぁく）で "さがしもの"を 探（さが）してるんだ。 "さがしもの"が なんなのか わからない。けど、"たいせつなもの"なんだ。たしかに なにかを 探（さが）してるんだ。じぶん探（さが）し？ってやつ？ なんか ヒト（ひと）みたいだね。

　だから、まいにち ジャパリパーク（じゃぱりぱぁく）を あっち行（い）ったり こっち行（い）ったり。

　きょうは こうざんに 登（のぼ）って 高（たか）いところから "さがしもの"を さがす よてい。

　ロープウェイ（ろぉぷうぇい）が あるから、それに乗（の）ってみる。まだ 着（つ）かないかなぁ、って ぼーっとしてたら 空（そら）が くらくなってた。ロープウェイ（ろぉぷうぇい）が うごいてなかったみたい。

　しかたないから、きょうの たんけんは ここまで。

　あしたは さばくちほーに 行（い）こう。

　きょうは とくに しゅうかくが なかったけど、きのうは すごかったんだ。

　きのうは じゃんぐるちほーの じゃんぐるを うろうろしてたんだ。

　そしたら、あのジャガー（じゃがぁ）と 会（あ）ったんだ！

　ジャガー（じゃがぁ）の ごげんは『一突（ひとつ）きでころす者（もの）』という いみなんだ。じっさい うでが むちっとしてたよ。そんなフレンズ（ふれんず）と 出会（であ）って、こうして生（い）きてるぼくは とってもすごいんだ。へへーん。

　あしたは "さがしもの"が 見（み）つかったら いいな。

　きょうは よていどおり さばくちほーに 来（き）たよ。

　でも、砂丘（さきゅう）に できた 影（かげ）に 入（はい）って じっとしてる。あつくて ゆでせるりあんに なっちゃう。……せるりあんって おいしいのかな？

　とりあえず、日（ひ）が さがるまで ここにいようと……ん？

　さばくに フレンズ（ふれんず）の すがたが 見（み）える。けど、さばくちほーの フレンズ（ふれんず）じゃない。

　ほそ長（ほそ）い ぼうを もっていて、見（み）たことがある。

　せるりあんハンター（はんたぁ）だ。

　あっ

　こっちを 向（む）いた。

　目（め）が合（あ）った。

　……にげなきゃ！

　せるりあんハンター（はんたぁ）は せるりあんを たいじする スペシャリスト（すぺしゃりすと）なんだ。なみの せるりあんじゃ たちうちできないよ！

　いそいで うしろへ にげようとした。

　けど、そのとき 砂（すな）に 足（あし）を とられて ころがりおちてしまったんだ。

　そうしてるあいだに 足音（あしおと）が 近（ちか）づいてきた。でも、体（からだ）が ふるえて うごかない。

「おーい！」

　そのとき。

　遠（とお）くで だれかが さけんだ。

「キンシコウー！ あっちでリカオンがセルリアンを見つけた。急ぐぞ」

「あ、こちらでもセルリアンを見つけました」

「なに？ サイズは？」

「そうですね……。だいたい私たちの背丈より半分くらいでした」

「なら、そっちはあとだ。こっちのセルリアンは大型で、救援が必要だ」

「ですが………いえ、わかりました。急ぎましょう！」

　……………。

　……足音（あしおと）が きこえなくなった。どうやら 助（たす）かったみたいだ。

　砂（すな）にうもれて すぐには見（み）つけられなかったみたい。けど、あちこち キズ（きず）だらけに なっちゃった。

　きらきらが あしもとに 落（お）ちる。

　……いたい。

　……いたくて なさけなくて ふがいなくて。

　大（おお）きい めだまから きらきらが たくさん こぼれた。砂（すな）のなかに 消（き）えていく。

　ぼくは、ぼくはね。

　ほんとうは よわむしなんだ。

　ほんとうは、フレンズ（ふれんず）を 食（た）べないんじゃないんだ。

　ほんとうは 食（た）べることができないんだ。

　……ジャガー（じゃがぁ）のときも、かのじょは 木（き）のうえで おひるねちゅうだっただけ なんだ。

　それに、ほんとうは そのとき、ねてる ジャガー（じゃがぁ）を おそおうとしたんだ。でも、フレンズ（ふれんず）を まえにすると 体（からだ）が ぷるぷるって ふるえて、なぜかなにも できないんだ。

　体（からだ）が 小（ちい）さいから？

　でも、それじゃあ ぜんぜん こわくないよ...。

　たいようが 赤（あか）くて、まぶしい。

　まぶしくて、めだまから きらきらが また こぼれた。

　きょうも なにも しゅうかくが なかったけど。

　もう かえらなきゃだね。

　よる。

　みなとに 帰（かえ）ってきた。

　落（お）ちこんだときや 悲（かな）しいときは よく ここに 来（く）る。

　ぼくは 海（うみ）に近（ちか）づくと きらきらしたものを 感じるんだ。ほかのセルリアンは そうでもない みたい。だから、それが ぼくの 探（さが）しているものだったら いいな。よるの海（うみ）は ちょっと こわいけど。

　一番一番（いちばんいちばん）さいしょのとき、気（き）がついたら ここにいた。ぼくは ここで 生（う）まれたんだ。なにをしてたか 思（おも）い出（だ）せないけど、やらないといけないことが あった 気（き）がする。

　砂浜（すなはま）で じっとして、耳（みみ）をすますように、目（め）をとじるように、うつむく。

　…… ……

　波（なみ）が "かがやき"を 連（つ）れてくる。

　……きぃ……

　だれかの 声（こえ）が 聞（き）こえてくる。

　……っきー……

　ぼくを 呼（よ）んでる。

　ぼくの "名前（かがやき）"を 呼（よ）んでくれる。

　……るす … よろしくね……

　この声（こえ）が だれなのか、ぼくは 知（し）らない。知（し）ってるかもしれないけど 思（おも）い出（だ）せない。

　けど、とてもなつかしい。

　……すぐ … もどるから……

　なぜか 大（おお）きい目玉（めだま）から きらきらが こぼれて しかたないけど。

　じぶんの名前（なまえ）しか 覚（おぼ）えてないけど。

　泣（な）き虫（むし）な ぼくだけど。

　けど

　まかせて

　パーク（ぱぁく）と いっしょに 待（ま）ってるから。

　それまでに "たいせつなもの"を 見（み）つけてみせるから。

　だから

　まかせて

　声（こえ）が 波（なみ）のひく音（おと）と いっしょに 消（き）えていく。

　目（め）を あけると、よるの海（うみ）が きらきらしていた。

　あしたは へいげんに 向（む）かおう。

　きっと、どこかに "たいせつなもの"や "かがやき"が あるはずだから。

　泣（な）いてなんかいられないから。

　だって。

　ぼくは "らっきー"。

　それが ぼくの 持（も）っている 名前（かがやき）だから。