巻き込まれ型主人公の災難

ちびまるフォイ

少女の隠していた秘密…?

深夜誰もいないときに、その少女はやってきた。


「私をあずかってほしい」


「はぁ!?」


なんだこれは。どういう状況だ。

もしかして、あれか追っ手からかくまってほしいとかか。

いやいや、でも入って来た時はぜんぜん切羽詰まってなかった。


とすると、単に俺に気があるものの声をかける勇気まではないので

こうして"預かってほしい"などと遠回しなことを言っているのか。


――どうなんだ。


「君は誰の依頼でここに来たの?」


「言えない」



「君は一体だれ?」


「言えない」



ってぜんぜん答えないのかよ!!


俺に気があるのなら多少は歩み寄ってくれてもいいじゃないか。

どうやらその線がなくなったとなると、追われてる説がさらに強くなる。


少女をちらと見ると、静かに棒立ちしていた。



……いやいや、考えすぎだな。


西暦2100年のロボット文化浸透しきったこのご時世に追っ手だなんて。

わざわざ追いかけるくらいならさっさとGPSとかハッキングした方が早い。


おおかた家出してきたとか、そんな可愛い理由だろう。うん。



再び少女に視線を戻すと、少女は何やらごそごそと書類を出して記入し始めた。


それを見て背中に氷でも入れられたような悪寒がぞぞっと走る。


「お、おまえ! いったい何を記入している!?」


「言えない」


まさか……なにか大きな決断をする系の書類なのではないか。

それをよりによってこんなところで。


なにより怖いのは自分が何も知らないままに、

大きな時代のうねりに巻き込まれているような気がする。


怖い。


やっぱりこの女は何かしら重要な存在にちがいない!!

どこかの秘密組織から逃げて来たエージェントで俺に責任を押し付けるつもりだ!

もしくは、俺になんらかの不思議パワーを与えて「世界を救うのです」とか言って消えるんだ!


そんなの絶対にお断りだ!


俺はバイトから帰って静かにゲームして学校へ行くだけの日常にささやかな幸せを感じているんだ!

こんな身を焦がすような大冒険に巻き込まれたくなんかない。



「お、おい! お前!!」


俺はドアを開けて少女をにらんだ。


「お前、いったい何を隠してる!」


「なにも。ただ言えないだけ」


「どうしてもか」

「どうしても」



「……だったら、言わないと、ここから追い出す!!」


女に突きつけた最大級の提案。

ここに匿われたければ秘密を話すしかない。


究極の選択に迫られた女は静かに答えた。


「わかった。すべてを話す。私という存在と、あなたという立場について」


ごくり。

自分で生唾を飲み込んだ音が聞こえた。


いったいどんな秘密を抱えているのか……!!






そのとき、コンビニのドアが開いて客が入って来た。



「すみません、アンドロイドのコンビニ受け取りに来たんですが、届いてませんか?」

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