世界が滅びる日の話をしよう

珠野

第1話

 簡単な話さ。男は笑う。

 明日世界は滅びるんだと。天気占いをするような口調で、軽やかに。

 つまらない話ね。女は捲れる。

 どうして滅ぼしてしまうのと。信憑性のない日替わり占いの結果が悪かったみたいな口調で、男は女が愛らしくて笑った。つんと尖らせた口先も、膝をついて三角に座る幼さも、男にとっては愛らしくて、いじらしい。


「僕が滅ぼすんじゃない、ごめんね。

 明日世界が滅びるとしたら、大凡の原因は君かな」

「あら、私、結構この世界が好きよ?

 フレンチトーストのために滅ぼさないでおこうって、考えるくらいには好きよ?」

「それを好きっていうのかい?!」


男は驚き、また腹を抱えて笑った。


「そんな君に滅びてしまえと云われる僕は、余程嫌われてるらしいな」

「なにを考えてるのか知らないけど、貴方フレンチトーストほど軟じゃないから心配してないのよ」

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