第7話5-7

「あ、これ授業でやった」

ユラが、映像を見ながら指差し、

 「確か、”オルストルの解放”て呼ばれた戦いね」

ヴァーシャがユラに確認するよう尋ねると、ユラはうなずき、

 「この大敗北で、政府側は求心力をなくしていくのよね」

コルネリアが、後に続いてユラに尋ねる。

 「うんそう」

 「しかし、これって昔からある現政府の広報じゃん」

 「先輩」

エーファはユミハに促され、ハッとなりコルネリアに向かい平謝りをする。

 「ごめん、コルネリア」

 「いいのよ。気にしないで」

そうは言ってはいるが、コルネリアの手は、こぶしが握りしめられていた。

 「くわばら、くわばら」

そんな様子をしり目に、ヴァーシャがベッテルに疑問を投げかける。

 「ローマンさん、何でこれを?」

その言葉を待っていたのか、ベッテルは口を開き。

 「この”オルストルの解放”は、エーベルハルトを語る上で、無くてはならない戦いだからね。何せ3倍以上もある艦隊を見事、壊滅させたのだから」

 「ええ・・・」

 「もっとも、エーファ君の言う通り、政府のプロパガンダによく使われる、宣伝文句みたいなもんだがな」

 「今の政府を侮辱するのですか!」

声を荒げ、今にもベッテルに積めようかのようなコルネリアに落ち着くように促す。

 「落ち着き給え、コルネリア君。別に私は侮辱するつもりは毛頭ない。実際、”オルストルの解放”は、事実なのだから」

興奮冷めやらぬコルネリアだが、一応席に着き深呼吸をし、落ち着きを取り戻す。

 「少し、話がそれるが、そもそもこの戦争はなぜ起きたのかな?」

 「民数の圧政」

 「不平等により貧富の差」

 「腐敗からの脱却」

 「支配階級への反乱」

各々、思い思いの理論を唱えるが、ユラだけはあえて何も言わず俯いてしまう。その様子をベッテルは、あえて何も言わないでいた。

 「そうだね。元々は、惑星開発には時間と労力、資金が必要だ。長期計画を行うには、管理する側が任期満了と共い交代し、その度に方針転換を余儀なくされれば、時間も資金も不足してしまう。そうした状況を変えるべく、長期的に管理、責任を代々引き継ぐ代わりに特権を与えた」

 「その結果、腐敗が進行した」

コルネリアは、平静を保ちながらベッテルに言葉を返した。

 「うん。長期支配は安定を生むか分かりに、流動性がなくなり諸悪の根源となり果ててしまう。澱んだ川のようにね」

 「だから、革命を起こした」

 「ユミハ君、確かに民衆は革命を起こしたが、実は最初の革命は失敗しているんだよ」 「えっ!」

その言葉に、4人は立ち上がり驚くが、ユラは座ったまま身を乗り出した。

 「だって、そんな事誰も教えてくれませんでしたよ」

 「そ、だれも教えない。と言うよりも教えさせないと言うのが正しいかな。おかしいと思わないかい、革命の始まった時期に空白があるのを」

 「で、でも、証人は大勢いるわけで」

 「その証人も、半世紀以上経てばどうなるか」

 「だけど、それとエーベルハルトが何の関係が?」

 ヴァーシャは、疑問のひもを解こうとベッテルに尋ねると、ユラが徐に口を開いた。

 「・・・民衆を扇動出来るだけのリーダーがいなかった」

 「ユラ?」

 「革命は確かに二回起きた。そのうちの一回は、各革命リーダーが足の引っ張り合いをして、結果的に自滅。その教訓を生かして二回目の革命には民衆を引き付けるリーダー、英雄が必要だった」

 「ほう・・・、ユラ君何処でそれを?」

 「私もローマンさんの本は読んでいますので、其処からの推測です」

 「これは参ったな。まさかお嬢さんが、私の本を読んでいたなんて」

 「でも、すぐ閲覧できなくなちゃいましたけどね。エヘ」

照れ笑いをしながら、愛想笑いするユラに、一同改めてユラの凄さを目にしたのであった。

驚きの中、ハッとなったエーファはユラに詰め寄り、

 「じゃ、エーベルハルトは民衆の支持のもと英雄となって行ったの?」

 「それは、ちょっと違うかな・・・」

 「違うって、何がよ」

 2人のやり取りに、ベッテルが間に割って入り、

 「議論している途中で悪いのだが、これを見てほしい」

話を中断させ、5人に1枚の映像を見せる。

端正な顔つきに自信に満ち溢れた瞳、姿勢正しく軍服を着た若者。

それを見たユミハは。

 「エーベルハルトですよね・・・」

一同ユミハの言葉に頷く。

 「では、これは?」

次に映し出されたのは、軍服こそ着てはいるが背は低く、少し小太りな男性。

 「だれ?これ」

エーファが怪訝そうにしながら、小首をかしげる。

 「次は」

また別な男性の映像が映し出され、その顔は印象に残らない特徴のない顔だった。

5人は、べ輝が何をしたいのか不思議に感じ、そのまま黙って事の成り行きを見守り、写し出される映像を見る。

それ以外にも、次々と見知らぬ男性の映像が映し出され、軍服以外は見た目も特徴もバラバラで統一がなされていない。

最後まで、見たものの結局疑問だけが残るだけだった。

 「この映像は・・・」

 不思議な表情をしながら、ベッテルにエーファは尋ね。

 「この映像に、共通点はあるかね」

 「軍服以外は、特に」

 「確かに、見た目には、軍服にしか共通点がない」

 「ローマンさん」

 「まぁ、まて」

焦らすベッテルに、イライラしてくる一同。

それを見て、ご満悦なベッテル。意地悪なことで。

 「此処から先は、先ほども言った、生前の私が建てた仮説にすぎない事を念頭に置いて欲しい」

 「はぁ・・・」

何がは始まるのか、5人は身を乗り出す。

一拍置いて、ベッテルが口を開く。

 「先ほど見せた映像は、最初の映像の人物以外は全員、エーベルハルトと名乗っていた人物たちだ」

その言葉に、一同は驚きよりも奇抜な仮説を受け入れる事が出来ず、放心状態になる。

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星雲舞台の瞬き gama @gama

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