ぴーSEA!

@issei_shido2315

第1話 声かけは慎重に!

 「春」それは出会いと始まりの季節。涙を流した卒業式を経て新しい世界へと旅立つ入学式へと足を運ぶ。周りの新入生全員が夢と期待で胸をふくらませている。

 ですが、私にはそんなことで胸をふくらませている暇はありません!今日は入学式があり、その後にクラス発表があってクラスメイトとの顔合わせがあります。

 ここまでの状況ならみなさんはさぞ楽しいことでしょう。え?何でそれどころじゃないのかって?ふっふーん教えてさしあげましょう!なんと私、瀬戸美樹がこの春から通う広島市立商業高校には同じ中学校から10人が受験しなぜか私だけが合格するという悲劇が起こっているのです!

 もちろん落ちてしまったみんなからは叩かれに叩かれましたよ・・・。やれ裏口入門だの入学金の代わりに体で払ったんだろーだの言われましたよ。

 そして私が今置かれているこの状況。くっそアウェーなんですよ!周りを見ても知ってるのは私の親!だけ!それ以外は知らない人!

 もうやっていけないですよ・・・。

「はい、えーそれでは入学式を始めますので新入生は講堂の方へ行って下さい。」

 先生がメガホンでそう声かけると周りで話をしていた子達が「楽しみだねー」「イケメンの先輩いるかな」「女がいっぱいいる学校ってやっぱ覗き放題だよな!」・・・まぁ最後のは聞かなかったことにして、とりあえず楽しそうに講堂へ移動して行った。

 私はスタートで挫けまいと指定された席へと移動した。

 隣の席には運よく大人しそうなメガネ少女が座っていた。

 おっしゃぁ!この子なら友達になれるかも!

 「あ、あの・・・。」

 「はい?どうかしましたか?」

 「え、えへへ・・・。」

 ・・・あれ、声かけるのってどうやればいいんだっけ。まずは、えっと・・・。

 「今日は晴れてよかったね。」

 「そうですね、せっかくの入学式に雨なんて似合わないですもんね。」

 「うん、そうだね・・・。」

 あれ、これ最初の話題間違えちゃったよね。天気の話とか仲いい友達とでも続かないのに初対面の人としても続くわけないじゃん!私のバカ!

 もう、しょうがない。もう1回声かけてみるか。

 「あの、あなたもこの学校に入学したの?」 

 「え?そうですよ、私もあなたと同じ高校に入学したんですよ。」

 なんで当たり前のこと聞いてんのよ私は!そんなの当たり前じゃない、だって同じ学校の入学式に来てるんだもの。しかも隣の席なのに!はぁ、もうはやく入学式終ってくれないかな・・・。

           ☆

 隣の子と気まずい雰囲気になってしまい重い空気のまま進んだ入学式も終わり、クラスに入りの席に座った。

 「はぁ、もうこれからどうしたらいいのよ。」

 「あれ?さっき隣にいた子だよね。」

 「え?あ、さっきの・・・。」

 「私は檜山綾って言うの。あなたは?」

 え、なにこの展開!さっきのミスを回収できるチャンスをわざわざくれるなんて!これはもうしっぱいしちゃダメね!やってやるわよ自己紹介くらい!

 「わ、わた、私はせ、瀬戸美樹・・・です。」

 あー、やってしまった。こりゃもうこの子に関わってもらえる最後のチャンスを無駄にしてしまったなー。

 「うふっ、瀬戸さんってかわいいのね。」

 なにこの子、天使かなにかなの!?

 「檜山さんこそ、その、か、かわいいね。」

 「あら、ありがとう。それと、檜山さんじゃなくて私のことは綾でいいわよ?」

 「じゃ、じゃあ、私のことは美樹って呼んで!そっちの方が呼びやすいだろうし。」

 こうして私と綾は友達になれた。の、だと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ぴーSEA! @issei_shido2315

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る