20170209
漢字というものは全くよくできたもので、真実をたった一文字で言い当てていることがしばしばある。
かねてより私の抱えている懸案の最たるものの一つである「腰」など、まさにその好例だ。
〈にくづき〉に〈かなめ〉
つまり、身体の要衝というべき腰を痛めて、私の日常生活は塗炭の苦しみの中にある。
まず、座ると痛い。
文筆業などと格好を付けた名前で税務署に登録しているが、仕事の大半は椅子に座っていることである。
椅子に座って資料を読み、
椅子に座って構想を練り、
椅子に座って字句を捻り、
椅子に座って物語を編む。
してみると文筆業という仕事の本当のところは椅子に座ることにあり、後のことはその〈おまけ〉なのではないかとさえ思えてくる。
と言うとさすがに冗句も過ぎるが、それほどまでに座ることと書くこととは切っても切れない関係にある。
中国の欧陽脩という大変頭の良い人は、「アイデアを出すには三上が良い」という風なことを言ったという。
すなわち、鞍上(あんじょう)、枕上(ちんじょう)、厠上(しじょう)の三つである。
現代では馬に乗ることは滅多にないから、鞍上については車や電車での移動ということになるだろうか。
この三上の内、二つまでもが座ることになるのだから、堪ったものではない。
加えて私の抱える腰痛は、寝ていても痛いのである。
実を言えばこのところ、精神に失調を来たしている甚だしい。
自分を嗤う幻聴が聞こえ、筆を執っても白紙は埋まらず、食慾も……まぁ、これは旺盛である。
この原因にもいろいろあるが、恐らくは睡眠不足がその大きな部位を占めているに相違ない。
腰痛が原因で心を蝕まれているというのは、まったく情けない話である。
さて、このまま手を拱いているわけにもいかぬということで私も様々な治療を試みてきた。
指圧からはじまり、ロキソニン、ボルタレンテープ、果ては温めた石で圧して貰うということもやった。
ただ、どうにも効きが良くない。
いっときは具合が良くなった気がするのだが、家に帰って腰を下ろすとやはり痛いのだ。
というわけで、8日はついに東洋医学の神秘、鍼治療のお世話になった。
今日のところはなかなか良い具合に効いている風である。
このまま軽快してくれれば良いのだが。
今後の効果に期待するところ、大である。
嗚呼、美味い苺を腹一杯食べたい。
夏炉冬蝉 蝉川夏哉 @osaka_seventeen
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